<楽天9-5ロッテ>◇18日◇コボスタ宮城

 星野仙一監督(67)が求めた「闘争心」を見せつけた。楽天が11安打9得点の猛攻でロッテに快勝し、4位に浮上した。4-4と競った展開だったが、8回に打線が爆発。選手会長の藤田一也内野手(32)が勝ち越し打を放てば、星野チルドレンと呼ばれた岡島豪郎外野手(25)銀次内野手(26)も適時打を放ち、突き放した。星野監督が辞任を発表し、負けられない一戦で選手たちが底力を見せた。

 試合後、多くの選手が同じ言葉を口にした。「絶対に勝たないといけない試合だった」。その思いが同点で迎えた8回、バットに乗り移った。嶋の右前打を皮切りに打線がつながった。2死一、二塁で藤田が思い切り引っ張った打球はロッテ井上の横をギリギリかすめ一、二塁間を破り、勝ち越し。なおも二、三塁で、続く岡島の詰まった打球は左前へポトリと落ちた。最後は銀次が左翼へと適時二塁打を放ち、この回一挙5得点。試合を決めた。

 動揺は確かにあった。指揮官の辞任は、試合前の午後4時から開かれたミーティングで選手たちへと直接伝えられた。日本一にまで導いた名将が、自分たちの責任で辞める。皆、しんみりと聞いた。そんな様子を察してか、星野監督は最後にこう付け加えた。「今日の試合勝つぞ」。消えかけた気持ちに火が付いた。

 星野監督が求めるものがある。戦う姿勢だ。会見で「闘争心というモノを皆さんに見せつけなければプロじゃない」と語気を強めて言い切った。だからこそ、選手は必死に食らいついた。執念にも似た気持ちは失策を誘い、打球は不思議と野手の間を抜けた。2度のリードを許しながらも、追いつき、勝ち越した。

 しかし、試合が終われば寂しさがこみ上げてきた。星野チルドレンと呼ばれた銀次は「まだ何があるか分からない。勝ち続ければ何か変わるかな。勝ち続けて監督が『俺、もう1年やろうかな』というのがまだ(期待に)ある」と辞任がうそであってほしいと願う。

 チームは3連勝で4位に浮上した。試合後、星野監督は「感傷的なものなど、何もないよ。4位も6位も一緒。(CSに)出られなきゃ変わらない」と話した。CS進出は現実的には厳しいかもしれない。だが、嶋は言う。「残り試合を全力で戦うことが監督に見せられる最後の姿勢だと思う」。まだ3位浮上の可能性は消滅していない。奇跡が起こると信じて、最後まであきらめない。【島根純】