<中日1-15巨人>◇23日◇ナゴヤドーム

 巨人大田泰示外野手(24)が3安打猛打賞、3打点の大暴れでマジックを4に減らした。5回無死一、三塁で同点の適時打を放ち、7回無死一塁ではダメ押しの2号2ラン。入団以来、「未完の大器」と期待を背負い続けた大砲が、開花の兆しを示した。チームは勢いにも乗って、13安打15得点。早ければ明日25日にも、名古屋の地で原監督が宙に舞う。

 メガホンが揺れた。2点リードの7回無死一塁、「バッター大田」のコールに一番の歓声が起こった。ファンの期待はただ1つ。初球、内角低めの直球。肘をたたみ、バックスクリーン左にたたき込んだ。「体が自然と反応した。力感なくスムーズにバットが出てくれた」。並外れたパワーを持つ大田なら、バットの芯に当たれば十分だった。

 迎えた先輩たちが、大はしゃぎだった。白い歯を見せて、ハイタッチの列に飛び込んだが、それ以上にニッコリ笑って、長野が、亀井が、矢野が、両拳を握って、力こぶを作るような謎のパフォーマンス。「泰示の走ってる姿を見れば、わかると思う。そっくりだから」(亀井)。試合後、パフォーマンスについて聞かれ、みんな笑顔だった。

 この男には、特別な力が宿るのだろうか。1発で空気を変えた。この回、6四球を絡め、6安打の乱れ打ち。4月2日DeNA戦の8回以来の1イニング10得点を挙げた。片岡が1イニング2本の適時打、代走で出場の小林も2点適時打を放った。4回まで山本昌に沈黙。大田が5回に放った同点打の後も、長野が勝ち越し打で応えた。

 変わったのは、背番号だけではなかった。試合前のティー打撃前。橋上打撃コーチは「“新入生”の大田泰示君です」と和らげた。「1年前のことを考えてみな。自転車で転んでメンバーから外れた時と比べれば、ずっと進歩してる。六、七分の力で振ろう。力まなくても飛んでいく」。記憶に刻まれる「10・4」の悔しさを思えば、自然と力がみなぎった。

 サイクル安打に王手をかけ、4、5打席目を迎えた。ベンチでは先輩から「スリーベースだけだ」とハッパ。お立ち台では「残念です」と言ったが、変な欲はなかった。4打席目はボールを見極め、フルカウントから二ゴロ。5打席目は死球で出塁した。「マジックが減ったし、チームが勝てることを優先したい」。6年目。何をすべきか、知っているのは自分だった。

 原監督は「泰示の同点打、2ランが効いた。このところ非常にいい風が吹いていますね」とたたえながら「まだ(ホップ・ステップ・ジャンプの)ホップですね」と今季1号と同じ言葉で鼓舞した。優勝へのマジックは4。スタンドからは「名古屋で決めて~」と声が飛んだ。早ければ明日25日、名古屋で原監督が宙に舞う。【久保賢吾】

 ▼大田が1発を含む3安打、3打点。大田の1試合3打点は12年9月1日DeNA戦に並び最多で、猛打賞も前記DeNA戦に次いで2度目だ。この日は左の山本昌から2安打、右の祖父江から本塁打。大田の左右投手別成績を出すと

 投手

 打-安

 

 打率

 対右

 22-4

 ・182

 対左

 19-8

 ・421

 対右は1割8分2厘の低打率だが、8月まで10打数0安打に対し、9月以降は12打数4安打。17日の今季1号も右の中田からで、最近は右投手も打っている。

 ▼大田の転倒…大田は昨年10月4日、寮からジャイアンツ球場に自転車で向かう際に転倒。両腕、両膝、顔を打って流血。バットを握れず、宮崎での秋季教育リーグメンバーから外れた。ポストシーズン出場に向けたアピールを逃した格好に。

 ▼巨人の優勝マジックナンバーは4。最短優勝決定日は明日25日。25日の優勝条件は巨人が24日から中日に2連勝か1勝1分けで、広島がヤクルトに2連敗。