指揮官と主将が、密室での時間を過ごした。巨人は8日、川崎市のジャイアンツ球場で15日から始まるCSファイナルステージへ向けて再始動した。原辰徳監督(56)が、報道陣をシャットアウト。室内練習場で阿部慎之助捕手(35)を非公開で打撃指導した。2年ぶりの日本一へ向けて、原監督が“大けん引車”と称する阿部の再生は不可欠。2人による濃密な共同作業で、悲願へ共に走りだした。

 2人だけの秘め事だった。屋外練習場でのアップ後。原監督が本隊と離れた。意中の阿部を引き連れ、室内練習場にこもった。報道陣もファンの目もない。打撃投手と限られた関係者だけによる空間をつくった。外にはわずかな打球音が漏れるだけ。密室でのマンツーマン指導。非公開で阿部を指導するのは異例だ。ポストシーズンへ向け、指揮官と主将が合体して修正を図った。

 原監督が共有した時間を表現した。「秘密ミーティングだよ。戦友としてね。本人にもいいきっかけになればいいし、お互いにね。我々の原点は汗をかくということ。汗をかかざる者には勝利なし!」。期待が言葉のトーンに表れた。

 他の主力選手が帰路に就いた頃、阿部が少し疲れた表情を浮かべて練習を終えた。指導自体は約30分間だったが、指導を受けた後も確認するように合計約1時間半打ち続けた。「いい時間でした。僕の方からも『こうだから、こうなっちゃうんですかね?』とか相談もできた。ありがたかったです」と感謝した。

 原監督は戦友に節目で刺激を与えてきた。今季は村田も密室で、長野も父貢氏(享年79)が亡くなった翌日でも熱心に指導した。先月30日には阿部&村田を日本一へのキーマンに挙げた。「2人で“大けん引車”になってくれるはずだよ」。今季は4番を8人もが経験。シーズン終盤まで打線を固定できなかった。それでもどれだけ苦しんでも、チームを引っ張るのは枢軸との思いがある。

 さあ日本一の覇権奪回だ。15日から始まるCSファイナルステージへ向けた再始動の日。初日だからこそ、2人の間で確認しておくことがあった。秘密のベールに包まれた濃密な時間。日本一の冠を奪うために不可欠な時だった。【栗田尚樹】