<パCSファーストステージ:オリックス6-4日本ハム>◇第2戦◇12日◇京セラドーム大阪

 日本ハムが死闘の末に、衝撃的な逆転負けを喫した。ソフトバンクとのファイナルステージ(15日開幕、ヤフオクドーム)進出へ王手をかけた第2戦で攻撃、継投に詰めを欠いた。同点の8回に代打稲葉の劇的な勝ち越し打が飛び出し、白星を確信したその裏。3番手の谷元がオリックスT-岡田に逆転3ランを浴び万事休した。2試合連続の2ケタ10安打も11残塁の拙攻が響いた。

 われに返ると、素になった。栗山英樹監督(53)が険しい顔つきになり、ぼそりとつぶやいた。「やっぱり、悔しいんだよ」。敵地のロッカー室から迎えのタクシーへと向かう帰り際。下りの階段の手すりを1度、小突いた。試合後の記者会見。気持ちの整理をつけていたかのように、装っていたのだろう。「ミスはあるんだ。いいんだ。挙げればキリがない」。仏のような表情に終始してきたが一瞬、崩れた。2年ぶりのファイナルS進出を手中に収めかけ、目前で逃した。

 最高の幕切れが見えた直後だった。同点にされた直後の8回。1死一、二塁で、代打稲葉を投入した。主将の大引を下げ、大勝負に出た。低めフォークをすくい、中前へ落とす勝ち越し打。「よく体が粘ってくれた」。今季限りで引退する大ベテランは大仕事に、三塁側ベンチへ戻るとダンスするように身をよじらせ、おどけた。若手たちにもみくちゃにされた。勝負あった、と誰もが信じた。ソフトバンクが待つ福岡行きを、完全に視界に捉えた。自信の継投策へ打って出た。

 その裏から3番手の谷元を投入。原拓、敬遠気味の糸井への2四球で2死一、二塁。この日、3打席3三振のT-岡田を迎え、繰り出すカードに詰まった。中継ぎ左腕エースの宮西を左すね負傷でベンチから外した。第1戦で登板し「連投不可」の条件付き起用で、CSへ同行している。栗山監督は「うちは今年、谷元で勝ってきた」と続投を最善策と選択。カウント3ボールから、4球目の直球をファウル。完全に打ち気で球種も絞り込まれていた。続けた147キロを右翼席へ運ばれ、激戦は終わった。

 一丸で、第3戦にかける。第1戦から三塁側ベンチには引退した金子誠のユニホームが、つるされた。CSの出場を辞退しながら今回、サポートのためだけにチームに同行している功労者の1人と、心1つに戦う思い-。若きリーダー候補の陽岱鋼の発案だった。

 先発上沢が快投、11残塁を喫したが打線は2戦連続2桁安打。ポジティブになれる要素は十分にある。発展途上の若手軍団を束ねて指揮する栗山監督は、力強く言った。「こんなんで下を向いている場合じゃない。2試合で(ファイナルSに)進むよりは、3試合やった方がいい」。正真正銘の大一番へ、全員で手を携えて向かう。【高山通史】

 ▼42歳2カ月の稲葉が8回、一時は勝ち越しとなる中前適時打を放った。ポストシーズンで打点を挙げた42歳以上の選手は、96年日本シリーズ第1戦落合(巨人=42歳10カ月)13年1S第2戦桧山(阪神=44歳3カ月)に次いで3人目。V打になっていれば、11年1S第1戦宮本(ヤクルト)の40歳11カ月を抜く最年長記録だった。