<セCSファイナルステージ:巨人1-4阪神>◇第1戦◇15日◇東京ドーム

 G倒へ、藤浪が魂の叫びや!

 セ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ初戦で、阪神藤浪晋太郎投手(20)が巨人相手に7回1失点。7回には満塁のピンチを切り抜け、力の限りにほえた。自己最速タイの157キロを計測する力投で、虎投ポストシーズン最年少勝利と、伝統の一戦で歴史に残る白星だ。リーグ優勝チームには1勝のアドバンテージがあるため、これで対戦成績を1勝1敗とした。

 腹の底から声を出した。無意識のうちに藤浪は右手を天に突き上げていた。ガッツポーズに雄たけび。「そういうのは、なかなかやらないんですけど」と、ヒーローインタビューで振り返るほど珍しいシーンは7回を抑えたときだ。先頭の阿部にソロを浴び、リードは4点から3点に。さらに3連打で無死満塁。代打セペダへの1ボールからの2球目だった。153キロの直球を繊細に、大胆に。内角高めに投げ込んだ。ボテボテの一ゴロ併殺。さらに代打井端を一飛に仕留めた。逆転危機で、集中力が違っていた。

 藤浪

 打たれたら仕方ないくらいの気持ちでいきました。

 CSの舞台は、1球の大切さを痛感した場でもある。昨年のCSファーストステージ広島戦で初戦に先発。赤い旋風に巻き込まれた。大事な場面で制球が甘くなりキラに3ランを被弾。敗戦投手となった。尊敬するヤンキース田中やレンジャーズのダルビッシュ。球界のエースなら、ここ一番で失投しなかったはず…。ことあればその試合の映像を見返し、悔しさを思い出した。

 「ここ一番の試合で、藤浪なら、と任せてもらえる投手になりたい」

 勝てる投手に再び目標を定めた瞬間でもあった。この日、1回から飛ばした。短期決戦仕様の投球。巨人打線をパワーで圧倒した。球速は最速タイの157キロを計測。四球を出しそうで出さない独特のリズム。大事な初戦を任され、アドレナリンもわき出ていた。

 藤浪

 意気に感じる部分はありました。真っすぐの走りも悪くなかった。飛ばした?

 出だしが重要だと思ったので。

 CSの借りはCSでしかかえせない。7回のピンチで続投を決断してくれたベンチの信頼に応えた。7回6安打1失点。チームとしてもポストシーズン27イニング連続無失点の新記録を樹立。何より藤浪の虎投史上最年少ポストシーズン勝利はG倒だからこそ価値はふくれあがる。この先勝でアドバンテージのある1勝の巨人に追いついた形だが、勢いは虎にある。

 藤浪

 日本一しか目指すところはないので。

 中4日で20日最終戦の登板の可能性もある。その背中は普段以上に大きかった。【池本泰尚】

 ▼藤浪がCS初勝利。プレーオフ、CSの年少勝利は82年第2戦工藤(西武)の19歳5カ月で、藤浪の20歳6カ月は5番目だが、セ・リーグでは11年1S第3戦赤川(ヤクルト)の21歳3カ月を抜く最年少勝利。日本シリーズを含め、阪神で20歳以下投手のポストシーズンでの白星は球団初。藤浪は6回まで0点に抑え、阪神は1S第1戦の1回から27イニング連続無失点。これまでプレーオフ、CSの連続無失点記録は10年中日がファイナルS第1戦1回~第3戦4回の22イニングで、日本シリーズは58年西鉄が第5戦2回~第7戦8回の26イニング(初戦からは51年巨人の24イニング)。ポストシーズンで27イニング連続無失点は初めてだ。