<巨人阪神OB戦:巨人OB10-0阪神OB>◇16日◇コボスタ宮城

 昔と変わらない、ありのままのゴジラだった。元巨人、ヤンキースなどで活躍した松井秀喜氏(40)が16日、巨人VS阪神OB戦(コボスタ宮城)に「3番右翼」で出場。12年ぶりに巨人の一員として背番号55でプレーし、4打数4安打と打棒を振るった。2打席目には現役時代、天敵だった遠山氏から本塁打へあと1歩と迫る右翼越えの特大二塁打を放った。東日本大震災の復興支援を目的とした伝統の一戦で、初めて杜(もり)の都でグラウンドに立ち、勇姿を届けた。

 12年前に時計の針が戻ったかのようだった。松井氏が巨人の、背番号55のユニホームをまとい、プレーした。「ジャイアンツのユニホームを着て試合ができてうれしかった。ずっとつけていた番号。違和感なく、楽しい時間を過ごせた」。国民栄誉賞表彰式や臨時コーチとしての復帰とも違う感覚。1人の野球人として至福の時間だった。

 「刺客」を送られても力でねじ伏せる。現役時代さながらの光景だった。2回2死一、三塁、阪神遠山氏と対峙(たいじ)した。99年に13打数無安打に封じられ、通算39打数10安打3本塁打と、しのぎを削った「松井キラー」との再戦。「(フォームは)変わらない。おなか回り以外はね。人のことは言えませんが(笑い)」と懐かしんだ。

 苦しめられた内角シュートは来ない。だが真ん中低めの球を完璧に捉えると、スタンドインを予感させる弾道が右翼へ飛んだ。惜しくも広いコボスタ宮城の外野フェンスの約2メートル手前で弾む二塁打だった。「打った瞬間に行ったかと思った。でも現役の時とは違う。もうひと伸びするパワーが残っていなかった。一番捉えた打席だけど、現役じゃないなと痛感した打席でもあった」。1打席目は最初のスイングで腰に手をやり、苦笑いした。引退した今、自然な姿でもあった。

 松井フィーバーは不変だった。今月初旬に出場が発表されると、チケットの売れ行きが約8000枚伸びたという。試合開始約2時間前の午前10時40分に仙台駅に降り立つと、約300人のファンがフラッシュをたき、数十人が追いかけるプチパニックとなった。

 松井氏は同11時に大トリを飾って球場入りし、ティー打撃で準備を整えた。いざグラウンドに立てば4打席目に藪氏から右翼線へ痛烈な安打を放つなど、4打数4安打とOBの中で異次元のプレーを披露した。「プロ野球の歴史をつくった数々のスーパースターがいて、これだけのメンバーがそろうことはない。特別なことだと思う」。野球をしている姿は、やはり雄々しく、美しかった。【広重竜太郎】