国内移籍可能な海外フリーエージェント(FA)権を行使した日本ハム小谷野栄一内野手(34)が26日、オリックスへ移籍することを正式に表明した。札幌市内の球団事務所で会見。西武も獲得意思を示していたが、3年総額3億円程度の好条件と、オリックス森脇監督らの熱意が決め手になった。8月に誕生した長女を含め関東に構えた新居を離れ、家族で関西に居住。決意十分に、野球人生の最終章へと再出発をする。

 ベテラン34歳の挑戦者が旅立つ先は関西だった。小谷野が苦悩を重ねて出した結論をこの日、明かした。「来季からオリックスバファローズの選手としてプレーさせてもらうことを報告させていただきます」。秘めてきた胸の内を、ようやく吐露できた。会見前には硬直。球団広報から急きょ、水道水の入ったペットボトルを用意してもらった。「不安はメチャクチャありますよ。そういうことも考えての『勇気』。そういうところでチャレンジする」。一大決心だったことを真っすぐ、さらけ出した。

 選択肢は三つどもえだった。CS終了後に日本ハム側と水面下で交渉。1年契約の提示を受け、まずは退団する方向性を定めた。11日にFA権行使を表明。西武も名乗りを上げ、2年総額2億円程度での獲得意思を示された。今季から新居を関東に構えたばかり。地域性に少なからず心も揺れたが、野球人として純粋に高く評価してくれる球団を選んだ。「毎日、悩みすぎていた」が、最後はシンプルに進路を決めた。

 決め手は条件だけではなく、人のぬくもりだった。17日に都内で交渉。直前にオリックス森脇監督からラブコールをもらった。携帯電話越しに伝わった熱意。小谷野は「連絡をいただいて。監督ですからね。こんな、うれしいことはなかった」と心を動かされた。その後は長時間、歓談して好感は増した。「いい投手が多い。守りからリズムを作れる。フィットしやすいなと思った」。三塁でゴールデングラブ賞3度の特長を生かせるチームカラーにも再び、躍動できそうな自身の姿を重ねた。

 覚悟がにじむ船出をする。来季は新居を引き払い、元モデルの亜咲美夫人と0歳の長女と生活の拠点を移す。単身赴任を選ばず「食事とかいろいろ助けてもらえるので」と最高のサポートも受け、人生初の関西での生活をスタートする。来年10月で35歳。野球人生の終盤に突入し、熟慮して導いた身の振り方だった。「自分の持っているものを存分に出したい。楽しみですよ」。今日27日にオリックスから正式発表される。野球人生の集大成の大勝負に出る。【高山通史】