楽天初の日本人アンダースローがベールを脱いだ。ドラフト6位、加藤正志投手(25=JR東日本東北)が15日、コボスタ宮城の室内ブルペンで、20球の投球練習を行った。捕手は立たせたままだが、いくつもの投球フォームを披露。打者にとってはやっかいな存在になりそうな片りんを見せた。

 単なるサブマリンじゃない!

 加藤のフォームは一定ではなかった。通常のフォームで投げたかと思えば、次はノーワインドアップから急きょ速度を上げてのクイック。そして足をゆっくり上げるフォーム。次々と変えてみては投げた。「ランナーがいない時のフォームは3種類あります」。楽天にはかつて、剛腕タイプの金炳賢というアンダースローがいたが、加藤はひとり時間差攻撃のできる変幻自在なサブマリンだった。

 この日のブルペン投球で普通に投げた際のタイムは1秒81。これがクイックだと最速で1秒13になる。ノーワインドアップから変速してクイックで投げる形では1秒26。足をゆったり上げるフォームは3秒81だった。西武牧田もクイックを駆使して打者を封じる。フォームだけで約2秒の差が生めるのは大きな武器になるはずだ。

 これだけでも打者は幻惑されるだろうが、そこにボール自体の緩急が加わる。最速134キロの直球と80キロ台のスローカーブとの差は約50キロ。フォームでつくる2秒の間と球速差50キロを加藤は武器にする。「まずは普通のフォームからだけど、余裕があればいろんなことをできる」と完成形のスタイルを口にした。

 高校時代、東京実に入学して2日目に、同じような右投手が10人いたことで、即座にアンダースローに転向した。その決断の早さが、プロへの道を開いた。足を開脚し体が前の地面に着くほどの柔らかさは、そのフォームの完成を後押しした。リリースポイントは地面から5センチの低さ。手が“ダフる”ことすらあるという。特色あふれる右腕。「アンダースローは希少価値が高いので、それを生かして緩急で抑えたい」。加藤には、その希少性を高めるための工夫があった。【竹内智信】

 ◆加藤正志(かとう・まさし)1989年(平元)9月7日、横浜市生まれ。小学3年から駒岡ジュニアーズで野球を始める。東京実では2年秋からエース。3年夏は東東京大会準決勝で敗れ、甲子園出場なし。鶴見大では4年秋に最優秀投手賞。JR東日本東北から14年ドラフト6位で楽天入団。173センチ、71キロ。右投げ右打ち。契約金4000万円、年俸800万円(推定)。背番号52。<主なサブマリン投手>

 ◆杉浦忠(南海)「右打者の背中から曲がる」といわれた大きなカーブが特長。59年日本シリーズで4連投4連勝。

 ◆足立光宏(阪急)若手時代は1試合17奪三振の速球派。後に数種類のシンカーを投げ分ける技巧派に転身。通算187勝。

 ◆山田久志(阪急)上体を深く折り曲げ、足立同様に入団当初は直球で押す投球。8年目にシンカーを覚えて3年連続MVP。通算284勝。

 ◆渡辺俊介(ロッテ)時々マウンドの土に手が当たるほど低い位置から球をリリース。千葉マリン(QVC)の強風も利用。

 ◆牧田和久(西武)山崎武(楽天)からクレームが入ったほどの高速クイックを得意とする。