3年目の進化を予感させる50球だった。巨人菅野智之投手(25)が宮崎での合同自主トレ最終日の30日、今季初のブルペン投球を行った。抜群の制球力を誇るが、この日は球がばらつく内容。今オフは投球法を変えず全身を強化しており、まだ順応している真っ最中。進化の過程で制球より球威を重視し、受けた相川をうならせる迫力十分の球を投じた。2月1日からの春季キャンプで完全形をつくり上げる。

 あっという間に、人垣ができた。菅野が室内練習場のブルペン脇の地面に置いていたグラブを拾い上げると、ブルペン捕手陣に「入ります」と告げた。「自主トレ中に1度入っておこうと思っていた。いい調整ができていたので入ろうと決めました。予定通りです」。ためらうことなく、89日ぶりにブルペン入り。2年連続の開幕投手の最有力候補がマウンドに立つと、報道陣が捕手の後方に押し寄せた。

 3年目の「初投げ」。抜群の制球力を発揮したわけではなかった。むしろその逆。直球、カーブ、スライダー、シュートを投げ分けたが、相川が構えたミットが横に縦に動いた。6割の力ながら44球目からは「中腰でお願いします」と申し出て7球投げ、計50球。完璧とは言えなかったが「内容はともかく、気持ちよく投げられた。100%じゃないけど良い状態です」と、すがすがしい表情で振り返った。

 荒れ気味の50球にこそ、進化の原石がぎっしり詰まっていた。昨年12月から約1カ月半、米国を中心に「体幹を中心とした全身」の強化に着手。走り込みとウエートで余分な脂肪をそぎ落とし、筋肉量を増やした。その一方で「投げ方、メカニズムを変える必要はないと思っています」。昨季MVPを獲得した投球動作はそのまま、肉体面のグレードを上げている。「傾斜で投げることで、確認したいことがたくさんあった」。進化の過程だけに、肉体と動作がかみ合わないのも無理はない。制球の乱れは、避けては通れない道だった。

 それでも、球の威力はさすがだった。初めて菅野の球を受けた相川を「質の良い球を投げているし、素晴らしいなと思います」と、うならせた。投球練習後には相川に「現状と気をつけていること」を話し合い、今後の確認点を依頼した。マウンドについた足跡から踏み出した足がやや右側に入っていることも確認。「若干インステップ気味なので。投げ始めはいつもそうなんです。ちゃんと直ります」と矯正点も認識した。

 キャンプ初日はブルペンに入らない予定。「まず目先の目標をしっかり設定したい。投手コーチ、監督、スタッフと相談し、どこの実戦に向け調整していくかを最初の目標にしたい」と冷静に見据えた。「最大の目標は日本一です」。3月27日のDeNAとの開幕戦(東京ドーム)まで約2カ月。制球、勢い、全てを整えると、どうなるのか。すさまじい「3年目の菅野智之」を完成させていく。【浜本卓也】<昨季後半戦以降の菅野>

 ◆14年8月4日

 右手中指の腱(けん)の炎症でプロ入り後、初めて出場選手登録を抹消された。

 ◆同23日

 2軍調整中に腰の違和感で、ブルペン投球を回避。

 ◆同9月10日

 故障不安も解消され1軍復帰。

 ◆同10月2日

 ヤクルト24回戦、右肘靱帯(じんたい)部分損傷で降板。

 ◆同12日

 ネットスローを開始。

 ◆同24日

 ブルペン入り。立ち投げで30球、中腰の状態で12球。

 ◆同31日

 右肘痛から復帰、1軍秋季練習に参加。

 ◆同11月2日

 秋季キャンプ最終日に14年最後のブルペン入り。65球を投じた。

 ◆同12月15日

 リーグ優勝旅行中、原監督が15年の開幕投手の候補に。V旅行後はUターン、再びアリゾナで自主トレ。

 ◆15年1月10日

 自主トレへハワイ出発。24日帰国。