今季からコーチを兼任する巨人高橋由伸外野手（３９）が４日、２つの顔を使い分けた。この日、自身のメニューを終えた後、ストップウオッチでフリー打撃中の各選手の打撃時間を調整。堂上、辻には声を掛け、意見を交換するなど、選手、コーチとして、フル稼働した。二足のわらじで臨む今季、青島神社に奉納した絵馬に書いた言葉は「逆風張帆」。どんな状況でも、舟のように突き進む。

　個人メニュー終了後、高橋由が向かったのは打撃ケージ裏だった。ストップウオッチ片手に、フリー打撃に臨む選手のスイングに目を光らせる。「そういうタイミングだったので」と語ったグラウンド上でのコーチ“初仕事”。隣に陣取ったのは松井氏だった。「野球の話とか、いろんな話をした」。松井氏の声に耳を傾けながら、視線を選手のスイングに送った。

　初仕事は話を「聞く」ことだった。沖縄での自主トレ中から「選手の動きをいろんな角度から見て、話を聞いて」の指導スタンスだったが、この日も徹底。「俺が聞きたいことがあったから」と話したように、新加入の堂上に「今までどのようにやって、何を考えてやってきたのか」を質問。自主トレをともにする辻にも「どうだ？」と自主トレ時との変化を聞いた。

　今季に懸ける思いを４文字に込めた。今年、青島神社に奉納した絵馬に書いた言葉は「逆風張帆」。初のコーチ兼任、４０歳で迎えるシーズンへの意気込みを凝縮させた言葉だった。

　高橋由

　今年は新しいことにも挑戦する。どんな状況、困難に陥っても、前に突き進んでいこうと。順風満帆な時は何をやってもうまくいくけど、そうじゃない時でも、荒波にもまれながら、帆を張って、舟のようにしっかり前に進んでいこうと、ね。

　兼任コーチだが、心の中心を占めるのは選手として勝負する覚悟。第１クールの４日間、元気よく、アグレッシブに動き回る姿が目立った。

　松井氏にも思いは伝わった。「タイムを計る姿は様になっていた」と冗談を交えたが、「まだまだ、選手として頑張りたい思いが強いと思うし、応援したい」とエールを送られた。高橋由との会話の中で「レギュラーを狙っていく」と聞いた原監督は「いつになく元気で、兼任コーチという肩書が追い風を与えているように感じる」と絶賛。大きな帆を立て、「由伸丸」が１５年シーズンの荒波を乗り越え、日本一の港に帰港する。【久保賢吾】

　◆逆風張帆（ぎゃくふうちょうはん）

　禅の言葉にある「一人順水張帆

　一人逆風把梶」から４文字を抽出した造語。帆船の前方から吹いてくる向かい風にあえて帆を張り、前進していく。逆境に耐え、歯を食いしばって半歩でも前進しようと努力することで、道が開けていくことを意味する。