ミスターから慎之助に、金言が伝授された。巨人の長嶋茂雄終身名誉監督(78)が14日、宮崎キャンプを訪問。昼食時間をずらし、阿部慎之助内野手(35)の打撃練習を約35分間にわたって熱血指導した。打撃復活を目指す主砲が必死に振り込む姿を「一生懸命やっている感じがしましたね」と高評価。「いいですよ、はい」と太鼓判を押した。

 ミスターの視線は、阿部だけを捉えていた。ブルペン視察を終えて本球場に戻ると、巨人の看板を背負う村田ら主砲もバットを手にしていた。だが、終身名誉監督の長嶋氏は迷いなく「背番号10」に向かった。ランチを後回しにしてグラウンドへ。三塁側ベンチ付近でロングティーをする阿部にすっと近づくと、後ろから、横から熱視線を注いだ。「ノー、ノー、ダメだね」「よーし、そうだ」「もっと」「オッケー、最高!」。乾いた打球音が鳴り響き、ミスターのボルテージも上がった。

 阿部が打撃ケージに入ると、中に入った。打つコースを指示しながら素振りをチェック。フリー打撃が始まると、真後ろからネットギリギリに顔を近づけて見た。2発の柵越えを見届け、再びロングティー。「下半身が大事な要素。下半身を重点にして、上半身、腕を使うように」との金言を授けた。「(バットが)内から出ている」「全然いいぞ」「完璧!」。濃密な35分間を終えると、「前半は悪い状態でいろいろあったけど、中盤から後半にかけていい打球が出てきていました。本人も一生懸命やっている感じがしましたね」と、うれしそうに話した。

 阿部の復活を強く望んでいる。昨年の年の瀬、夕食に誘った。都内の鉄板焼き屋で舌鼓を打ちながら、どうしても伝えたいことがあった。「このチームは、慎之助がやらないといけない」。何度も繰り返した。

 2001年、プロ1年目の阿部の素質を見抜いて開幕スタメンに抜てきし、起用し続けた。その原点から、“愛弟子”は超一流まで駆け上がった。だが、昨年は満足のいく成績を残せなかった。「新成」をスローガンにしているが、慎之助の「復活」はリーグ4連覇には欠かせない。「今年、阿部君がいい打撃をすることによってチームに影響をもたらすから(復活できるかは)大きいですね」。だからこそ、阿部を見るために宮崎まで足を運んだ。

 長嶋氏の思いを、阿部もしっかり受け止めた。下半身始動の重要性を助言され「自分が取り組んでいることと同じだったので良かったし、ありがたかったです」と感謝。りりしい表情で「(期待は)すごくプレッシャーに感じている。こうやって指導してくださるし、気に掛けてくださるので、応えられるようにしていきたい」と決意を表明した。ミスターからの「魔法の言葉」で必ず、よみがえってみせる。【浜本卓也】