<東京6大学野球:慶大5-1東大>◇第4週初日◇30日◇神宮

 慶大が1回に4点を先制、東大を押し切った。1回1死二、三塁、4番で主将の伊藤隼太外野手(4年=中京大中京)が右中間へ2試合連続となる先制3ラン。8回には5番伊場竜太捕手(4年=慶応)が左翼に今季1号ソロを放ち、ダメを押した。伊藤は今季6試合目にしてシーズン自己最多の4本塁打。07年秋の田中幸長(早大、現トヨタ)以来となる通算10号に達した。立大は左腕の小室正人投手(3年=日野)が早大を5安打に抑え、3-0で快勝した。小室はリーグ戦初完封勝利。

 絶好調の伊藤が、一振りで決めた。1回1死二、三塁。1ボール後の直球を「一撃必殺」で右中間スタンド中段へ軽々放り込んだ。「打った瞬間に行くと思いました」。これで今季の第1打席は6戦5打数4安打9打点、3本塁打(1四球)。全10安打12打点4本塁打の多くが集約される。脅威の「第1打席の男」だ。

 なぜ最初の打席に強いのか。伊藤は「相手投手にどういう印象を与えるかを大切にしている」と、警戒心や恐怖心を抱かせるスイングや打撃を心掛ける。加えて、チャンスでの並外れた集中力。「チャンスで回ると気持ちが入る」と話す。後を打つ伊場は「打撃練習では飛ばないんですよ。勝負強いというか、頼れるというか…よく分からないですね」と、同期のスラッガーに驚嘆する。

 なぜ飛ばせるのか。昨オフ、体重を意識的に増やした。「パワーアップを目的に、スピードも落とさずに」と一時的に88キロにし、そこから筋肉をつけながら絞った。昨秋の早慶優勝決定戦時の反省があった。体調不良から体重が80キロを割った。早大・斎藤(日本ハム)から中越えの三塁打を放ったが「(体重が)80キロあれば入っていた」と分析。現在体重はシーズン当初の84キロをキープ、ベストの状態で臨んでいる。

 前日29日、指揮を執る江藤省三監督が69回目の誕生日を迎えた。全体練習後、グラウンドでバースデーケーキにろうそくを立て、祝ったという。伊藤は「(監督に)1勝をプレゼントしたかった」。いつも以上の気合で、第1打席に向かっていた。【清水智彦】