<首都大学野球:東海大1-0武蔵大>◇最終週最終日◇23日◇平塚

 今秋ドラフトの目玉、東海大・菅野智之投手(4年=東海大相模)が、逆転優勝をかけて武蔵大を1安打完封したが、惜しくも9季連続Vには届かなかった。リーグ戦初の3連投も、緩急をつけて毎回の15奪三振。シーズン最多完封記録に並ぶ今季5完封目で、最後に意地を見せた。

 意地の1安打完封。最後の最後に、菅野が理想的な投球を演じた。「とにかく1点取ってくれ。絶対に完封するから」。ベンチで宣言した通り、許した安打は8回に二塁打されたスライダー1本だけだった。リーグ戦初の3日連続先発も「今日は(ノーヒットノーラン)いけそうな気がしたくらいです」と自信があった。余計な力が抜け、カーブを中心に緩急を使い、今季最多の15三振を奪った。

 伯父の巨人原辰徳監督(52)と原貢氏(76)の親子鷹などで80年春まで達成した、リーグ記録に並ぶ9季連続優勝は、日体大が勝ち点を落とさない限りない。そのライバルが目の前で完全優勝を果たすのを、複雑な思いで見届けた。

 今季は「初めて」ずくめで苦しんだ。入学以来、初めて勝ち点を落とし、初めてシーズン2敗し、初めて3回でKOされ、初めて優勝を逃した。だが終わってみれば、自責点3の防御率0・42は昨秋に続いてリーグ1位。通算12完封でリーグ最多完封記録まであと1つ、通算300奪三振まであと3つと迫った。

 確かな成長も感じている。3連投は、決勝で力尽きた昨春の全日本大学選手権以来。剛速球で押し続ける力任せの投球から、緩急を覚えた。この日の試合後も「疲労感がまったくない。今年の一番の収穫です」とケロリとしていた。

 昨年の全日本大学選手権、明治神宮大会は準優勝で、あと1歩届かなかった大学日本一。閉会式後「まだ日本一になるチャンスがなくなったわけじゃない。秋に向かって挑戦していきます」と話した菅野は、やりきった表情で上を向いていた。【鎌田良美】