<東都大学野球:亜大8-0中大>◇第1週最終日◇9日◇神宮

 6季連続優勝を狙う亜大は、ドラフト1位候補の山崎康晃投手(4年=帝京)が自己最多12奪三振で完封し、2勝1敗で勝ち点1とした。魔球ナックルを解禁し、中大を4安打に封じて勝利。10奪三振完投した1回戦に続く今季2勝目で、リーグ通算10勝目(2敗)を挙げた。

 山崎が中指と薬指のツメを立てて、中大の3番神里に立ち向かった。4回無死、初球にプロでも使い手が希少なナックルを投じた。回転なく揺れて落ちる114キロは惜しくもボールになったが「相手が何だこれはと考えてくれたら」と、目先を変えるのが狙いだ。

 今季は大学生投手にドラフト候補がそろうが、ナックルを操るのは山崎だけ。オフから練習を重ね、今季のリーグ戦で初めて投げた。3球すべてボールになり「まだまだです」と苦笑いするが、こんなチャレンジ精神も大きな魅力だ。もともとは中学時代、元レッドソックスのウェークフィールドや「ナックル姫」吉田えりの握りをマネして習得した。ブルペンにこもり、初めて覚えた変化球がナックルという異色の球歴だ。

 魔球はまだ試行錯誤中だが、直球とスライダー、ツーシームを織り交ぜ、134球を投げて12奪三振で完封した。10奪三振完投した1回戦から中1日での先発で、完投を志願。「力をセーブする気はサラサラなかった」とクールに言った。冬場は連日200球以上投げ込んだ。「マウンドは孤独。練習も孤独に追い込んだ」。こんな試合に勝つために、走り込み、投げ込みを愚直に繰り返した。

 生田勉監督(47)は「エースとしていいピッチングをしてくれた。彼の自信になるし、チームの信頼感も上がった」と最大限の賛辞を贈った。切れ味鋭い直球に、魔球ナックルが加われば、魅力は倍増する。フィリピン人の母を持つイケメン右腕が、ドラフト戦線でオンリーワンの輝きを見せ始めている。【前田祐輔】