4年越しの愛が実り、ついに結ばれた。巨人はドラフト1位にホンダ・長野久義外野手(24=日大)を単独指名し交渉権を獲得した。06年は日本ハム、08年はロッテと2度のドラフト指名を断り、貫いた巨人への思いがかなった。原辰徳監督(51)はドラフト会議中に会場を離れ、埼玉・狭山市内の合宿所を訪問。背番号「7」のユニホームまで用意し、速攻で指名あいさつを行った。ついに「巨人長野」が誕生する。

 テレビ中継が巨人の1位指名を伝えても、長野は表情を変えなかった。「実感?

 まだ全然わかないです」。大粒の汗をかいていた。隣に座った野球部の安藤監督から握手を求められ、ようやくほおが緩んだ。

 苦しみもあった3年間だったという。「(日本ハムに)行こうかと揺れたときもありました。去年はロッテさんに指名いただいて、さすがに2度、断るのはすごく苦しかったです。本当に、もう行こうかなと思ったこともありました。すごく悩みました」とかみしめるように言った。

 巨人は子供の時のあこがれ。テレビで試合を見て育ち、原(現監督)が好きだった。小学校の文集に「巨人の選手になる」と書いた。大学で無名のころから注目してくれたことへの感謝もあった。「同級生たちがプロで活躍しているのを見ながら負けられないと。社会人では技術的にもそうだけど、人間的にもいろんなことを教わり成長できたと思います」。選択に間違いはなかったと言い切った。

 外野はラミレス、谷、亀井、鈴木、松本らそうそうたるメンバーがそろう。競争は激しいが「層が厚く伝統のあるチーム。楽しみと不安と半々。1位指名にふさわしい選手にならないといけない」と立ち向かう。

 原監督は2位指名を終えると都内のドラフト会場を後にした。埼玉・狭山市のホンダ野球部合宿所まで1時間以上、車を飛ばした。手には、巨人の帽子と背番号「7」のユニホーム。「CHONO」と名前も刺しゅうされていた。

 原監督

 (長野には)強く強く運命を感じます。やはりレギュラーを取ってほしい。心技体すべてにおいて、その器は十分。高いハードルを越えてほしい。

 自ら帽子とユニホームを着せガッチリ握手した。早くも入団会見のよう。10分あまりの会談では「ともに戦おう」と熱い言葉をかけた。長野も「日本シリーズ前のお忙しい中、ありがたいです。監督は目力のある方でした。開幕から頑張りたい」と受け止めた。巨人愛はついに結ばれた。3年間、蓄えた力を発揮するときが来た。【古川真弥】