虎を救って…サルも救う!

 阪神の育成ドラフト3位、穴田真規内野手(17=箕面東)が愛するサルのために一肌脱ぐ。地元の大阪府箕面(みのお)市は野生のニホンザルの生息地として有名だが、餌やりなどで凶暴化が進み、人とのトラブルが社会問題化している。穴田は社会貢献活動として、サルと人間が共存できる地域づくりに一役買うことを宣言。16日、大阪市のホテルで支度金200万円、年俸300万円で仮契約した。(金額は推定)

 仮契約を終えてホッとしたのもつかの間。箕面が生んだスラッガーが口にしたのは地元への熱い思いだった。社会貢献活動に積極的な穴田は「やりたいです。そうなればうれしいです」とサルのために立ち上がることを宣言した。

 箕面山は都市部に近い野生ザルの生息地として有名。56年に天然記念物に指定され、現在は約600匹。全国でイノシシやクマなどが人里に迷い込む社会問題が発生しているように、箕面でも例外ではない。観光客などの餌付けなどにより、人に慣れすぎ、人家や畑を荒らしたり、人に危害を加えたりのトラブルが発生している。

 箕面で育った穴田にとってサルは友だち同然だ。小学校、中学校時代は「箕面の滝」に続く滝道を走れば必ず遭遇した。手に持つお菓子を奪われてしまったことや、小猿と遊んでいたらサルの集団に追いかけ回されたりと思い出は尽きない。「僕はサルが好きなんです。ついこの間も国道にいました」とうれしそうだ。

 近年は箕面市が中心となった対策団体がサルの餌場移動実験、給餌方法などの研究により改善も見られるが、まだまだ研究費や、観光客の餌やりを禁止する看板設置など「サルを自然に帰す運動」の費用は不可欠だ。世界的にも貴重な大都市の近くに住む野生のニホンザルは天然記念物に指定されている。具体的なプランはこれからだが、大事な箕面の「シンボル」との共存と保全に、穴田は何らかの形で手を貸せることを夢見ている。

 幼少時から阪神ファン。「長打力が一番の特長。そこを見てもらいたい。甲子園の打席に立ってみたい」。あこがれの甲子園で本塁打を放つ夢と、もう1つ、サルとの共存の町をつくる夢を叶えるためには、一刻も早い支配下登録が必要だ。育成選手の身だけに給料も少ないが、地元愛が穴田のモチベーションになる。「育成の試合が増えていてチャンスが多く回ってくるので、それをキッチリ生かすようにと言われました」。高校通算31本の長距離砲はプロで何本のアーチをかけるのか。その1本1本が、人間とサルをつなぐ架け橋になる。【柏原誠】