<東都大学野球:東洋大6-1青学大>◇最終週初日◇25日◇神宮

 最後の最後。藤岡貴裕投手(4年=桐生一)はありったけの力を込めた。9回2死二、三塁。青学大最後の打者を追い込むと、今季自己最速タイの149キロを連発し1ボール2ストライク。5球連続直球の後、126キロのスライダーで見事見逃し三振に切った。「最後はねじ伏せてやろう、くらいの気持ちでした」。13奪三振は今季最多だった。

 “事件”はこの直前に起きていた。腰に張りがあるため、高橋監督から「勝てば最後」と予告された大学最終登板。相手は昨秋から連敗続きの青学大だ。「今日は1点もやらない」と完封を狙った。ところが9回2死一、二塁。打ち取ったと思われた飛球を、遊撃手と左翼手がお見合いして落としてしまったのだ。不運な安打で1点を失い、1度は悔しさでマウンドを蹴った。だが結果的に、これが藤岡の底力を引き出した。

 ウイニングボールは、自身にとっても貴重なもの。でも藤岡には贈りたい人がいた。高橋監督だ。1部リーグ通算勝利数502は、歴代トップの偉業。「監督の節目と自分の最後が重なったのは運命というか…、すごくよかったと思います。充実した4年間でした」。目尻を下げ「宝物」を恩師にそっと手渡した。

 4年間で通算27勝、323奪三振を積み上げた。うち23勝が3年春以降のもの。ネット裏ではロッテ、横浜など8球団のスカウトが最終確認に訪れた。ドラフト1番人気は必至で「欲しがってくれる球団が多いのは名誉なこと。幾つ来るか分からないけど、そのチームでしっかり投げられたらと思う。1年間、先発のローテーションを守れる投手を目指します」。一区切りつき、初めて具体的な抱負を口にした。

 12球団OKの姿勢で、あとは運命の日を待つのみだ。【鎌田良美】