中日のドラフト2位指名、四国アイランドリーグplus香川・又吉克樹投手(22=環太平洋大)が金言を手にした。名古屋市内で中部日本放送(CBC)「サンデードラゴンズ」に出演し、ゲストの山田久志氏(65=日刊スポーツ評論家)から「栄光に近道なし」と書かれたサインボールをプレゼントされた。全国的に無名の“超雑草男”が山田氏の座右の銘を胸にプロで汗にまみれる。

 ピース又吉には会えなかったが、憧れの人に会えた。前日26日に同姓の売れっ子芸人とニアミスしたドラ2位右腕に、思わぬ出会いが待ち受けていた。この日は2日連続で地元テレビ局の生放送に出演。本番前の打ち合わせで「ゲスト山田久志氏」の文字に目を疑った。

 「まさかお会いできるなんて、夢にも思わなかった。僕にとっては本の世界の人なので…」

 プロ通算284勝を挙げた「史上最高のサブマリン」は又吉の“師匠”だった。内野手から本格的に投手に転向したのは西原高(沖縄)3年夏。「チームに140キロを超える投手が2人いたので」と、打者の目先を変える意味でスリークオーター気味だった腕を、さらに下げてサイドスローにした。

 そんな時に同校のコーチから薦められた本が、山田氏のインタビューをもとに構成された「山田久志

 投げる」だった。「手首を立てると書いてあって、これはやってみようと思ってやりました」。最高の教科書を手にすると、高校時代に最速117キロだった直球は、大学4年間で30キロ近くもアップした。

 VTRで投球をチェックした山田氏からは「腕が遅れて出てくる。これは教えてもできない」と絶賛された。帰り際には山田氏の座右の銘「栄光に近道なし」と書いたサインボールまで受け取った。「本当にうれしい」。エリート街道とは無縁。独立リーグの星は、山田氏の言葉をかみしめた。プロでもひたむきに、1歩ずつ歩んでいく覚悟だ。【桝井聡】

 ◆「山田久志

 投げる」

 山田氏が中日の投手コーチに就任する直前のインタビューをもとに98年4月に小学館文庫から刊行された。著者は矢島裕紀彦氏。8つの章に分けて構成され、配球やフォームなど技術的な話や過去のエピソードなどを自身の言葉で語っている。“史上最高のサブマリン”がプロ20年間で284勝を挙げた秘密が詰まっている。