物申すトリがV導く!

 阪神鳥谷敬内野手(28)が25日、兵庫県西宮市内の球団事務所で契約更改に臨み、3000万円増の1億6000万円でサインした。今オフ新選手会長に就任し、自身初の越年更改。約1時間の球団と話し合いの中では、自らの金銭面以上にチーム方針を問いただした。金本、藤川が主張した勝利追求の意識を、チーム代表の立場からズバズバと進言。交渉役の沼沢球団本部長も「こんなの初めて」と驚く、脱クール、脱優等生のリーダーシップを見せた。(金額は推定)

 風格すら漂っていた。1時間の交渉を終え、落ち着いた表情で会見の席についた鳥谷は、はっきりと熱い言葉で、ナインの思いを代弁した。

 鳥谷

 勝ちにこだわりたい。選手の中でも勝つためにやっていきたい。選手とチームが一丸となってやっていきたいと話しました。

 今オフ新選手会長に就任し、自身初の越年更改。今までのクールな仮面を脱ぎ捨て、物言うリーダーとして熱弁をふるった。12月初旬から沖縄自主トレをはさんで約2カ月、複数回の下交渉を経て合意に達した。代理人を起用せず自分の口にこだわり、キャンプイン目前まで意見をぶつけた。

 鳥谷

 ただ勝とう勝とうと言っても、なかなかできない。そういう環境作りもできることがある。上(先輩)の人たちとも話して、自分が感じたことを伝えた。

 こだわったのは金銭面ではない。勝利を追求する姿勢だった。昨季は4位。厳冬更改が続く昨年末、藤川が契約交渉で『本当に勝ちたい集団であるのか?』を球団に問いただしていることを明かした。3日前の22日には1億円の大幅減俸でサインした金本が、優勝への強い思いを口にした。新リーダーも思いは同じ。ナインの総意を球団にぶつけきった鳥谷の表情はすがすがしかった。

 鳥谷

 すぐ結論が出ることじゃない。いろんな話をできたのが一番。急激に変わることはないけど、話し合いをできただけでも前に進んだ。そういう意味では納得しました。

 物申す男。その変身ぶりに交渉役の沼沢球団本部長も驚かされた。「金本選手(の交渉時と)同じような話をした。いかに選手が結束しているか、勝ちたい勝ちたいという話。(チームは)城島選手が入って、勝てるチャンスがあると感じている。何が何でも勝とうと話し合った」。鳥谷同様、密室の詳細こそ明かさなかったが、激論が交わされたのは間違いない。やりとりの中で鳥谷のリーダーシップへの期待はグンと大きくなった。

 沼沢球団本部長

 今まではこちらからの要望ばかりだったけど(今オフは)自ら引っ張っていくという彼自身の自覚を強く感じた。(こんな印象は)初めて。

 鳥谷もけん引への自覚は十分。志半ばで現役引退を余儀なくされた前会長の思いを引き継ぐ覚悟だ。これまでは控え目に自らの目標を口にする程度の印象だったが堂々と優勝宣言した。

 鳥谷

 赤星さんは(05年ロッテとの)日本シリーズ4連敗の悔しさを残したまま引退された。何としても優勝して、日本シリーズに出る。日本シリーズの悔しさは日本シリーズでしか晴らせない。

 オレが引っ張る。力強い所信表明で、新猛虎時代の幕開けを誓った。