第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表候補の日本ハム中田翔内野手(23)に12日、異常事態が発生した。沖縄・名護キャンプで昼食中に、突然、左耳の下あたりにボール大の腫れが出現した。病院へ駆け込み、抗生剤の服用で症状は治まったが、侍ジャパンの宮崎合宿を3日後に控えて本人も周囲も一時はヒヤリ。大事には至らず、中田は明日14日に予定通り宮崎へ向けて出発する。

 午後の練習が始まった直後だった。やんちゃな背番号6の姿が球場から消えた。フリー打撃の順番になっても現れない異常事態だ。

 姿を消した原因は、左耳の下あたりに突然、出現した腫れ。ケース打撃などの練習を午前中に終え、昼食をとっていた時だ。みるみる、中田の頬が膨らんできた。「自分でも最初は気づかんかった。みんなに『その顔、どうした?』って言われて。リンパの辺りが硬式ボールくらい腫れてた。俺の顔、えぐかったで」。鏡を見て、変わり果てた自分の顔にビックリ。耳鼻咽喉科に急行し、診察の結果は、幸い大事には至らず。抗生剤を服用し、あっという間に腫れも引いた。「押したら、まだ痛い」と言いながらも、すぐに練習に戻って、1人で最後にフリー打撃を行った。

 年明けの自主トレから、ほぼ休みなし。疲労はピークに達している。一昨年のシーズン終盤にも疲労によるめまいに悩まされるなど、見かけによらず、体は意外にも繊細だ。病院に付き添った横田チーフトレーナーは「耳下腺炎じゃないか?

 ということです。疲れて抵抗力の落ちたところに、ばい菌が入ったのでしょう」と説明した。再検査の予定はなく、5日分の薬を受け取り経過を観察することになった。

 一番心配していたという栗山監督は「それに関してはノーコメント」と口を閉ざしたが、ひとまず安堵(あんど)。全体練習後には稲葉の監視の下、ケロリとした顔でティー打撃や素振りを約1時間、行った。時々、ふざけて稲葉に叱られる場面もあり、いつも以上に元気いっぱい。「ティーを打った後の素振りはキツイ」とぼやきながらも、充実の笑顔で居残り練習を完了した。明日14日には侍ジャパンの合宿のため宮崎へ移動する。「俺は向こうでも、稲葉さんと一緒に練習をやりたい。俺、代表とか初めてやし…。環境が変わるから、すごく心強い。ずっと後ろにくっついて行こうかな?」。周囲が肝を冷やしたのもつかの間、日が暮れる頃には、すっかりいつもの中田に戻っていた。【中島宙恵】

 ◆世田谷井上病院・井上毅一理事長の話

 リンパ節が腫れる原因として考えられるのは、外傷、耳下腺炎や唾液(だえき)腺炎等の炎症、虫歯や口腔(こうくう)の病気などさまざまケースがありますが、部位が左耳下だと耳下腺炎です。疲労が蓄積されるなどして抵抗力が弱まり、ウイルスが入ったと考えられます。抗生剤で簡単に治るものですが、若い年齢の場合はその後が重要です。副作用として睾丸(こうがん)炎を引き起こし、精子がなくなってしまう可能性もあります。しばらくは飲酒を控えて夜遊びをしないなど、安全な生活をした方がいいでしょう。