<WBC:日本16-4オランダ>◇10日◇2次ラウンド1組◇東京ドーム

 華々しく、豪快な1発攻勢で米国行きを決めた。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)2次ラウンド1組で、3連覇を狙う日本は、オランダに7回コールド勝ちした。1回、鳥谷敬内野手(31)の今大会チーム初本塁打となる先頭打者弾を皮切りに、1試合の大会記録に並ぶ6本塁打を含む先発全員の17安打。これまでの鬱憤(うっぷん)を晴らすような猛攻で、17日(日本時間18日)からサンフランシスコで行われる決勝トーナメントに3大会連続で進出を決めた。

 バンザイした。総立ちの3万7000観衆の拍手のシャワーを浴びる。山本監督は帽子を振りながらお立ち台に立つと、無邪気に両腕を振り上げた。鳥谷の先頭打者弾への思いを問われると「ね~ッ」と言った後、約5秒間、言葉が続かなかった。そんなシーンが笑いを誘うほど、日本中を幸せにする大勝で米国行きのパスポートを手にした。台湾との延長10回の激闘を制した勢いそのままに2次ラウンド(R)突破を決めた。「一昨日の勝ちで神様がご褒美をくれたんですかね」と浸った。

 記録的な本塁打ショーだった。1次Rから低調で、不安視された打線が激変した。初めて1番に配置した鳥谷の初回の一撃を皮切りに4回まで毎回の計5本塁打。7回には坂本がグランドスラムをたたき込み、コールド勝ち。「スモール・ベースボールと言われたのが、うそみたい」。僅差で苦戦の連続から一変した。流動的だったリードオフマンに鳥谷抜てきなど大胆に動かした用兵が成功した。「このリードを守ろうと思ったら今日が一番、胃が痛くなったわ」。打線の突然変異でオランダを沈めた。

 率いる侍たちが太平洋を渡らせ、大会3連覇への挑戦権をプレゼントしてくれた。多くを語らず、背中で引っ張るのが浩二流の戦闘スタイル。この日は、チーム発足と同時に主将に指名した阿部が緊迫ムードを軽くしてくれた。試合前の円陣。8日の台湾戦で走者を制止するためグラウンドにはいつくばった、三塁コーチを務める高代内野守備走塁コーチを話題にして盛り上げた。「高代さんみたいに、みんな全身を使っていこう!」。口べたな指揮官の代わりに、一体感をつくってくれた。

 確信した。この日、初めて言えたキーワードがあった。「アメリカへ行けば『頂点』を目指していく」。就任当初から、一貫していたのは決勝トーナメント進出という目標の公言。乗り越え、上方修正できるようになった。日の丸にかける尊い思いも明かした。今日11日で東日本大震災から、ちょうど2年を迎える。東北など被害が大きかった地域へ向けて、メッセージに込められていた。

 山本監督

 せめて我々の戦いで笑顔を取り戻してもらえたら、ありがたい。

 日本を背負う。侍という世界に通じる称号も背負う。信頼する侍たちとともに、アメリカン・ドリームを成し遂げにいく。【高山通史】<日本の主な記録>

 ◆毎回得点

 コールド試合を含め大会初。日本は台湾戦の8~10回と合わせ10イニング連続得点。

 ◆1試合6発

 09年第1ラウンドのキューバに並ぶチーム1試合最多本塁打の大会タイ。09年のキューバは南アフリカ戦でセペダ2、デスパイネ、オリベラ、グリエル、セスペデスの計5人が放った6本で、6人が1発は大会史上初。

 ◆「サイクル本塁打」

 坂本がWBCの日本勢として初の満塁本塁打。日本は他に3ラン、2ラン、ソロが出て、4種類の本塁打をそろえる「サイクル本塁打」は大会史上初めて。チームの4イニング連続本塁打も大会史上初。

 ◆17安打

 WBCの日本として1試合最多(過去最多は15安打が4度)。

 ◆最年長本塁打

 40歳7カ月の稲葉が本塁打。40代選手の本塁打は大会史上最年長。過去最年長は06年にモイゼス・アルー(ドミニカ共和国)がイタリア戦で放った時の39歳8カ月。

 ◆鳥谷が先頭弾

 WBCで日本の先頭打者本塁打は、イチローが06年の米国戦で1回表に放って以来2度目。鳥谷は阪神で先頭打者本塁打を4本記録している(表3本、裏1本)。