侍ジャパンの阪神藤浪晋太郎投手(22)が19日、WBC合宿合流前の最終登板を上々の結果で締めた。練習試合・日本ハム戦(宜野座)に今季初先発し、5回を1安打1失点。球団が準備したWBC仕様の土を入れた硬いマウンドで、最速154キロ計時し、三振7個も奪った。感謝を胸に、いざ世界一を目指す旅に出る。

 藤浪は白い歯をこぼしてニヤリ、笑った。1回1死、2番杉谷を迎える場面だ。「2番 セカンド すぎ“たに”~」。正解は「すぎや」。ウグイズ嬢のかわいいミスに球場がドッと沸くと、マウンド上で表情を緩ませた。余裕のある笑顔は「超速調整」が順調に進んだ証しにも映った。

 藤浪 ある程度は変化球を試せたし、真っすぐも良かった。全体的にいいキャンプを過ごせたと思います。コンディションを整えて入れば大丈夫、というところまでは来ました。

 WBC合宿合流前の最終登板は日本ハム戦。最速154キロを4度計測し、若手主体とはいえ、昨季の日本一軍団から5回で7三振を奪い、1安打1失点に抑え込んだ。4回はWBC球にてこずって「ツーシームが思ったより曲がりすぎた」ことから2死球を献上。この回だけで3四死球を与え、適時打で1点を失った。だが他の4回は完全投球。右打者への外角カットボールで「想定していなかった」という見逃し三振を2度奪う場面もあった。

 この日は宜野座球場マウンドが変色していた。普段は黒土のはずがプレートから打者に向かう扇形部分が赤茶色に。前日の練習後、急きょ藤浪用にWBC仕様の固いマウンドが造り上げられていた。

 香田投手コーチと阪神園芸で計画を練り、もちろん藤浪も快諾。球場近くにあった土を持ち込み、約30分で特設マウンドは出来上がったという。阪神園芸の金沢健児さんは「藤浪君だけなのでプレートと踏み出しを中心に。粘土質が強く粘り気があって掘れにくい、いわゆる硬い土。その上にコンディショナーといわれる赤い土をかけています」と説明。感触を確かめた藤浪も「違和感はなかった」と予行演習に大満足だ。

 直前の実戦2試合ではWBC本番で任される「第2先発」を見据えて、首脳陣に2番手登板を用意してもらってもいた。

 藤浪 周りの皆さんに協力してもらって、感謝しています。

 さあ、WBCへ。縦じまは縦じまでも、侍の戦闘服に着替える時間が近づいてきた。【佐井陽介】