日本の4番が心を整えた。侍ジャパン筒香嘉智外野手(25)が27日、恩師と慕う巨人田代富雄2軍打撃コーチ(62)から激励を受けて福岡に乗り込んだ。25日に行われたソフトバンクとの強化試合で侍ジャパンは完封負けを喫し、打線の不安がささやかれた。筒香は安打を放っていたが、恩師と再会して気分を一新した。貧打解消へ-。筒香が侍打線を目覚めさせる。

 筒香は胸を張って福岡の地に入った。威風堂々の姿勢は何ひとつ変わらない。「今までと同じ。目的に向かって進むだけです」。多くを語ろうとしない。ただ、侍ジャパンの4番としてチームを引っ張っていく決意は強い。

 宮崎では原点を思い返す出来事があった。25日のソフトバンクとの強化試合を終えた夜。筒香は巨人2軍宿舎に電話をかけた。「DeNAベイスターズの筒香です。田代さんの部屋につないでください」。田代コーチの携帯電話がつながらなかったため、フロント係に内線での呼び出しを依頼した。「これからホテルに会いに行きます。あいさつだけさせてください」。

 ホテルのロビーに着くと笑顔で迎えてくれた。先輩の巨人金城2軍外野守備走塁コーチも一緒だった。「頑張れよ」。「頑張ります」。ほんの3分にも満たない会話だったが、筒香には意味のある時間だった。

 プロ1年目、横浜(現DeNA)の2軍監督だった田代コーチに指導を受けた。強制的な指導は1度もなく、常に筒香の考えを尊重してくれた。夜間練習では、室内でバットを振り込むチームメートから1人離れ、グラウンドに立った。「僕は球場のバッターボックスで素振りをするのが好きだった」。そんな18歳の筒香を同コーチは黙ったまま見守り続けてくれた。

 1軍のナイター中継をテレビ観戦し、午後10時過ぎから再びバットを振り込む日々だった。筒香は「寮のロビーで田代さんの焼酎をつくりながら試合を見るのが日課だった。そこでいろいろなことを教えてもらった。今の僕があるのは田代さんのおかげだと思っている」と振り返った。

 同日の強化試合。筒香は左前打と2四球で3打席とも出塁したが、侍ジャパン打線は4安打無得点で敗れた。その夜に恩師に会い、原点を思い返した。あの時と同じように前へ進むだけだ。今日28日には台湾プロ野球選抜との強化試合に臨む。筒香は「昨日よりも今日、今日よりも明日。パワフルに突き進みたい」と目を見開いた。【為田聡史】