「縦割れの五右衛門」に任せた! 侍ジャパンの石川歩投手(28)が今日7日のWBC初戦、キューバ戦(東京ドーム)に先発する。小久保監督から1カ月前に直接通達された大役にも「気負うことなく行きます」とポーカーフェースを貫いた。6日は東京ドームでキャッチボールなど軽めの調整。「赤い稲妻」を斬り、2大会ぶりの優勝へ向けて先陣を切る。

 初戦の大役を任された石川が、平常心で仕事に徹する。「やるべきことをやる。それしかできない。僕は点を取れないので」と自然体を強調した。シンプルに物事を考える。「コントロールと自分が持っている球種を全部使って抑えるだけ」と大舞台でもやることは変わらない。直球に宝刀のシンカー、カーブ、スライダーを駆使する。

 この日は投手陣のキャッチボールに入らず、チューブを用いた肩回りのストレッチなどに時間を割いた。ウインドブレーカーを羽織ったまま軽いダッシュを10本ほど。チームスタッフを相手に行ったキャッチボールでは力みのないフォームから伸びのある球を投げ、状態の良さをうかがわせた。1日の台湾選抜との強化試合では得意のシンカーを狙い通りに決めて3回6奪三振。WBC公認球への不安はない。

 小久保監督は世界一奪回へ向け「投手力の高さ。勝ち上がっていくには、そこしかない」と、あらためて語った。2月の代表合宿から5試合の実戦を経て、投手陣の出来に手応えを感じているからこそ「しっかり逃げ切りたい」と継投策をポイントに挙げた。

 ひょうひょうとした五右衛門が、最高のスタートダッシュをもたらすと信じている。あの時もそうだった。2月7日、ロッテキャンプ地の石垣島。石川は室内練習場の壁際の通路で、視察に訪れた小久保監督から呼び止められた。「キューバ戦、任せる。頼むぞ」。ファン、メディア、同僚からも見える衆人環視。もちろんタイミングを見計らった上での面と向かった立ち話だが、不意打ちの通達にも心は乱れなかった。

 だから、初戦を任された。小久保監督は「つかみどころのない選手。ひょうひょうと、明日も出てきて欲しい。彼の性格も踏まえて初戦の先発にした」と明かした。相手は「赤い稲妻」キューバ。次戦以降に影響を与える重要な一戦だ。石川は、ロッテの同僚だったデスパイネを擁する打線について「いい打者がいっぱいいる」と警戒しつつも「ゼロに抑えたい」と静かに闘志を燃やした。強心臓の右腕が満を持して挑む。【木下大輔】