<ゼロワン:東京大会>◇21日◇後楽園ホール

 05年に死去した橋本真也さん(享年40)のデビュー25周年興行を行い、長男の大地くん(17)がリングデビューした。キックボクシングルールのエキシビション戦で、小林聡(37)と対戦。元世界王者の容赦ない攻撃に2度のダウンを喫しながら、2回を戦い抜いた。

 2回中盤、大地くんは左ボディーフックを受け、うめき声を上げて倒れた。2度目のダウン。しばらく動けない強打にも、立ち上がった。終盤は捨て身で前へ出て、拳を振り回した。父の代名詞だった闘魂の片りんに、満員の観客が沸いた。声援はいつの間にか「ハシモト!」から「ダイチ!」に変わっていた。

 大地くんは試合後、号泣した。「あんな試合しかできず悔しい。父の足元にも及ばない。甘すぎた。父はすごい人だったと感じた」。それでも、周囲の反応は温かい。橋本さんと闘魂三銃士を組んだ新日本の蝶野正洋は、目頭を熱くした。「涙腺が緩んだ。気持ちが前に向かっていた。最高のプレデビューだった」。10月12日の自分の25周年興行に招待すると決め、「(IWGPヘビー級選手権に出る)大谷は橋本の気持ちを受け継いでいる。それを見て勉強してほしい」と話した。大谷も「今デビューさせたら、橋本さんに大目玉を食らう」と、じっくり育成する方針だ。

 現在高2の大地くんは、卒業後1年をめどにプロレスデビューを狙う。「ゼロワンを引っ張った父のように、人を引っ張れる存在になりたい」。試合後は、スタンドから「焦るな!

 これからだ」と声が飛んだ。父を愛した者たちに支えられ、破壊王2世は自ら定めた運命へ歩み始めた。【森本隆】