年間90日間のうち88日が満員御礼となった今年、早めに会場入りした観客を沸かせたのが十両の個性派だった。そこで、通常は幕内対象の大相撲大賞も、今回は特別に「十両役者賞」を設定。毎日発表される敢闘精神あふれる力士の年間最上位者を選んだ結果、1位に輝いたのが宇良(24)だった。

 まだ入門2年目で敢闘精神評価の仕組みについては「知らなかった」と言うが、年間1位と知ると「すごい」と目を細めた。特に、目立ったのが新十両の夏場所だ。4日目は土俵際で前転宙返りするように執念の下手投げを決め、10日目は出羽疾風に後ろに回り込まれながらも、腰投げで大逆転勝ち。両日とも幕内1位の稀勢の里を上回る票数を記録した。

 ファンの評価が高かった理由については「体が小さかったからですかね」と笑った。十両の敢闘精神上位者は1位宇良と2位石浦が173センチ、3位里山が175センチと小兵ぞろい。小さな体を躍動させて大きな力士に立ち向かう姿は、まさに敢闘精神にあふれる。期待された奇手の居反りこそ出なかったが、宇良が熱烈に支持されたのも納得だった。

 館内を大いに盛り上げた1年も「沸かせたなあ、というのはない」と言う。今は目の前の相撲に必死で、声援を実感するまで至らないが、間違いなく励みにはなっている。「一生懸命取っている姿を見て、応援していただければうれしい」。来年はどんな相撲で土俵を沸かせてくれるか、今から楽しみだ。【木村有三】

 ◆敢闘精神あふれる力士 日本相撲協会は、本場所来場者及び協会携帯公式サイト、アプリの有料会員向けに力士の敢闘精神を評価するアンケートを各日実施。幕内、十両の各上位3人を公表している。