[ 2014年6月9日7時53分

 紙面から ]チャーター機でブラジルのイトゥに到着した日本代表の本田。左は遠藤(AP)

 12日開幕のW杯ブラジル大会に出場する日本代表が7日(日本時間8日)にブラジル入りした。合宿地の米フロリダ州タンパからビラコポス空港にチャーター機で到着。拠点となるサンパウロ北西部のイトゥに入った。日刊スポーツではFW本田圭佑(27)の密着取材を、1月のACミラン移籍直後から続けてきた。日本のエースが思い描いている「W杯優勝」への道筋とは-。

 本田がブラジルに足を踏み入れた。公言する「W杯優勝」のため信頼する仲間とともに。日本からみて地球の真裏で勝負に出る。

 サッカー人生は挫折の繰り返しだった。紆余(うよ)曲折の末、名門ACミランの10番を勝ち取ったもののイタリアでは逆風にさらされている。荒波の中を突き進むような人生を「ばくち」と表現したことがあるが、本田のやり方は、のるかそるかではなく理詰めでスタートする。今回の大勝負もシミュレーションを重ねてきた。1次リーグC組初戦コートジボワール戦は14日(日本時間15日)。それまでの過ごし方が大きな意味を持つと力説した。

 「まずそれぞれ出る選手が、ベストコンディションを保つことですよね。理想論を言っているわけじゃないです。これは、現実論です。そのためには最後の10日間のトレーニングが非常に大事になってくる。そこをしっかりやれば、まず100%グループリーグは突破できる。そこからは大会を通じて、いろいろ変化してくる。W杯というのはね。まず10日前からのトレーニング。それだけでも、全然違う。それができれば、自力でも俺たちは今、ベスト8まで行ける」

 ブラジル入りした今こそが「10日前」と表現する、まさにその期間にあたる。不安視された本田のコンディションも2得点した6日のザンビア戦(米タンパ)で上向いた。語っていた通りに。コンディションさえ整えば、前回南アフリカ大会のベスト16を上回る力がある。自力でベスト8まで行ける-。これが冷静な見立てだ。

 コンディションが整い「自力」で8強に進んだとしても、頂点はまだ先。優勝まで、まだあと3勝が必要になる。ここからは勝負に付き物の運や勢い、そして奇跡といった要素もまとって進む必要が出てくる。語りには、現実に理想がミックスされていった。

 「奇跡を信じるか、どうか。奇跡を呼び込むか、どうか。これは理想論です。だからコンディションは本当に大事です。逆に奇跡だけを信じて、その土台がなくなるとグループリーグ突破も難しくなる。当たり前のことをまず100%、抜かりなくやれば8強まで行ける。そこからは、奇跡を呼び込む習慣をみんなで、普段の生活からやっていきましょう、っていうことです」

 奇跡を「祈る」のではなく「呼び込む」と表現するところは、いかにも本田らしい。そのための生活を事前合宿地の米フロリダ・クリアウオーターから続けている。肩の力が抜け、異様なまでに落ち着き払ったその振る舞いも、そう考えると納得がいく。【取材・構成=八反誠、益子浩一】

 ◆日本が準々決勝進出すると

 A組、B組を勝ち上がった国との対戦が待つ。A組はブラジルが1番手。5連続決勝T進出のメキシコ、98年3位以来の上位を狙うクロアチア、元浦和監督フィンケ氏率いるカメルーンと試合巧者ぞろい。B組は前回Vスペインと準Vオランダがそろい、チリは前回16強以上を狙う。強敵との対戦は避けられない。

 ◆日本のW杯

 8強進出はない。初出場98年フランス大会は3戦全敗で1次リーグ(L)敗退。02年日韓大会は1次L2勝1分けで1位通過し、決勝トーナメント(T)1回戦で敗れ16強止まり。06年ドイツ大会は1分け2敗で1次L敗退。10年南アフリカ大会は1次L2位通過、決勝T1回戦でパラグアイにPK戦の末敗退、8強を逃した。