<第6回AKB48選抜総選挙>◇7日◇味の素スタジアム

 AKB48の37枚目シングル(8月27日発売)の選抜メンバーを決める第6回選抜総選挙の開票イベントで、AKB48渡辺麻友(20)が初の1位に輝いた。投票開始直後にトップで、連覇を狙ったHKT48指原莉乃(21)を大逆転。王道アイドルが悲願を達成した。

 2位となった指原のスピーチが終わると、主役の登場を待ち切れないファンの大歓声が響いた。「まゆゆ!

 まゆゆ!」。司会者の声もかき消された。ギュッと引き締め続けていた渡辺の表情が最後の最後に崩れた。眉間にしわを寄せる。右手を口に当て涙をこらえる。2年越しの悲願達成をかみしめながら、ゆっくり、ゆっくりと歩いた。

 「今日まで諦めずにやってきてよかった。自分の信じた道と、いつも応援してくれるファンの方々を信じてきてよかったです!」

 投票開始直後に1万2299票差をつけられながらも、史上最大の大逆転劇を演じたヒロインは、笑顔をはじけさせた。

 普段から、どんな報道陣の、どんな質問にも、笑顔でまっすぐに答える。ただ数日前、襲撃事件後について尋ねると、見たこともないような険しい表情を浮かべ、黙り込んでしまった。親しい関係者は「事件後は『怖い』と漏らしていたが、何とか3日間で気持ちを切り替えた。アイドル業にまい進することが今、自分のできる一番の役割と感じたのでしょう」と明かす。

 AKB48が未曽有の状況を迎えたからこそ、負けるわけにはいかなかった。「正統派アイドルのかがみ」と言われ、アイドル道を突き進んだ。AKB48のコンセプト「会いにいけるアイドル」をまっとうし続けた。握手会の存続を揺るがす今回の事件は、いわば死活問題。この日も直接事件について触れなかったが、「これからも、AKB48はいろいろなことに立ち向かっていくんじゃないかと思います。そんな時こそ、みんな一丸となり、絆を深め、ファンの皆さんと力を合わせて進んでいきたいと思います」と一体感を強調した。

 昨年は指原に完敗し、3位だった。「1度は1位になることを諦めかけました」。それでも渡辺の心を突き動かしたのは、先輩たちが作り上げてきたAKB48に対する愛だった。

 スピーチを終えると、ピラミッド形のステージの頂点へ向かった。椅子に座り、景色を眺め、喜びをかみしめた。そして、われに返った。自分の役目を思い出した。「最後にひと言、言い忘れてました。AKB48グループは、私が守りますっ!!」。【横山慧】