【ロンドン25日=鈴木雅子通信員】人気シリーズ映画の最新作「ハリー・ポッターと謎のプリンス」(日本公開11月21日)に出演した英俳優ロブ・ノックスさん(18)が24日未明、ロンドン南部の路上で刺殺された。弟の携帯を奪おうとしていた男たちとけんかになり、ナイフで刺された。英国では少年による暴力事件が多発し、社会問題化していた。ノックスさんは同映画に主人公と同じ魔法魔術学校の生徒役で出演。撮影を2週間前に終えたばかりだった。

 ノックスさんは行きつけのパブ「メトロバー」で、弟ジェームスさんや友人と合わせ4人で酒や食事を楽しんでいた。前週に同店を訪れて弟の携帯を取り上げようとしてトラブルになった男が再び来店。店内のいすを投げ付けて「おまえのノドをかき切ってやる」などと脅しながら弟を外に連れ出した。

 追いかけたノックスさんと男は路上でもみ合いになり、男と一緒にいた21歳の男が持っていたナイフでノックスさんの首を刺した。男は数人の男に取り押さえられたが、ノックスさんは搬送先の病院で死亡した。英デイリーメール紙によると、同店常連客や友人たちからは「弟思いで、正義感の強い少年」として好かれていたという。ノックスさんを刺した男は殺人容疑で逮捕された。

 将来を期待された俳優だった。若手演技派がそろう人気連続ドラマ「ザ・ビル」に警官役で出演し、世界的人気シリーズの最新作「ハリー・ポッターと謎のプリンス」に抜てきされた。ダニエル・ラドクリフ(18)が演じる主人公ハリーが通うホグワーツ魔法魔術学校生徒マーカス・ベルビィ役。原作では、魔法薬学教授に招かれた食事会でハリーらを紹介され、キジ肉をノドに詰まらせあわてる場面などが描かれている。出演場面の撮影は2週間前に終えたばかり。撮影セットには弟も毎日のように訪れていたという。同映画を製作・配給するワーナー・ブラザースの広報担当者は「大きなショックを受けています」と話した。

 ロンドンなど英国では少年らの暴力が社会問題化している。今年に入って14~19歳の28人が殺され、半数が刺殺だった。市民の間からナイフ所持規制を求める声が強まっている。ロンドン警視庁は今月中旬から、店舗の入り口などで金属探知機を使った不審者のチェックを開始していた。