ロサンゼルスで火山が噴火して溶岩流が街を襲う「ボルケーノ」(97年)、史上最大の大嵐を題材にした「パーフェクトストーム」(00年)、未曾有の大惨事を防ぐために奔走する巨大竜巻を追うストームチェイサーを描いた「ツイスター」(96年)、地球温暖化による異常気象に見舞われて地球が氷河期へと突入する「デイ・アフター・トゥモロー」(04年)など、数々の災害パニック映画をヒットさせてきたハリウッドで、巨大地震を題材にした新たな恐怖パニック映画が公開されて話題になっています。

 アクションスター、ドウェイン・ジョンソン主演の「カリフォルニア・ダウン」は、ロサンゼルスやサンフランシスコなど西海岸にマグニチュード9以上の巨大地震が起きたら…というシナリオを描いたパニック映画。原題のタイトル「サンアンドレアス」は、過去にサンフランシスコ地震やノースリッジ地震などの大地震を起こしたことで知られるロサンゼルスからサンフランシスコにかけて縦に伸びる巨大断層の名前。奇しくもこの所、小規模な地震が多発しているLAでは、公開直後から専門家たちが様々な番組やニュースで、映画の中で描かれたようなことが実際に起こりうるのかどうか解説するなど、本作をきっかけに地震や防災に関する関心が急激に高まっています。

 日本ではネパール大震災に配慮して公開が延期されたそうですが、本作は巨大地震によってラスベガス郊外にあるフーバーダムが崩壊したことを発端に、ロサンゼルスの高層ビルが次々に倒壊し、最後はサンフランシスコに巨大津波が襲いかかる様を、VFXを駆使した超ド迫力の3D映像で描いた作品です。単なるパニック災害映画ではなく、家族の絆を軸にしたストーリー展開であることと、劇中に登場する地震専門家が防災に役立つ情報を提供していることで、よりリアルに地震の恐怖が伝わってきます。

 実際にこの映画のような巨大地震が起こる可能性については、内容はさておき、「もしもではなく、いつ起こるか」と言う点では専門家の意見は共通しているようです。ただ、劇中で描かれたような巨大津波がサンフランシスコを襲うことも、地面が真っ二つに割れることも、フーバーダムが崩壊することも現実ではありえないとの見解で一致していますが、この作品をきっかけに防災意識が高まったことは間違いないでしょう。東日本大震災の記憶がまだ新しい日本での公開は難しいと思いますが、アメリカだけでなく、日本でも将来起こりうる巨大地震に対する危機感と備えを行うきっかけにはなるのではないでしょうか。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)