◆新宿スワン(日)

 小説や漫画の実写化で何度も失望した経験から、最近は原作を読まないで見るようにしている。「新宿スワン」もそう。13年まで連載されていた大人気漫画であることは置いておいて、まっさらな気持ちで見た。

 舞台は新宿・歌舞伎町。人生のド底辺から、ひょんなきっかけでスカウトマンとして拾われた龍彦(綾野剛)が、思わぬ嗅覚を発揮して成り上がっていく。愛すべきお調子者の一面と、腹の中に抱えた闇を、綾野がはまり役と言える怪演で表現。見終わってみると、龍彦にふさわしい俳優が他に思い浮かばないほどだ。

 展開的には、底辺から成り上がる痛快さがもう少し欲しかった。上に認められ、サクサクとポジションを確立していく。もうちょっとハードモードにした方が、龍彦に感情移入しやすかったはずだ。

 歌舞伎町の街並みは、ほとんどが静岡・浜松で撮影したという。再現率は相当なもので、言われるまで気付かないほど。一方で、園子温監督のトンデモ演出がいつ出るか、いつ出るかと期待していたら、出ないままエンドロール。お色気やおちゃらけを期待したら、肩透かしを食らう。【森本隆】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)