「風が吹けば桶(おけ)屋がもうかる」。ほんの小さな出来事が、思わぬところで大きな影響を及ぼすことのたとえだ。実際、「バタフライ・エフェクト」など、映画の題材にもされてきた話だが、今作は大切な何かが失われたときの「人」に焦点を当てたファンタジーだ。

 主人公(佐藤健)は病院で、末期の脳腫瘍で余命わずかと宣告される。そんな中、自分の生き写しのような悪魔が現れ、大事なものと引き換えに1日の余命を与えられる。元恋人(宮崎あおい)との縁をつないだ「電話」、親友タツヤ(浜田岳)との交流の道具だった「映画」、母(原田美枝子)との思い出が詰まった「猫」がこの世から消えたら? 脇役陣に演技派がそろいすぎたせいか、健クンの感情表現が薄味気味。悪魔を演じている健クンの方が、生き生きしているように見えた。

 健康そのものにしか見えない健クン、チョロチョロ動き回るはずの猫が、箱の中で拾われるのを待っているか? などなど、突っ込みどころは多い。和製「バタフライ-」を期待すると肩すかしを食らうが、心のすきまをくすぐられると、号泣必至。好みが分かれる作品だろう。【森本隆】

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