柔道の松本薫がバラエティー番組で恐ろしい話をしていた。リオ五輪で銅メダルに終わった翌日、会場で遭遇した福山雅治に後ろからハグされたという。失意を癒やそうという心温まる行為である。ところが大ファンの松本は別のものを感じてしまった。突然、月1回のものが始まってしまったというのだ。これぞ福山オーラのなせるわざか。

 結婚からベビー誕生を控えたタイミングで、純愛の匂いの強いドラマ「ラヴソング」(今春フジ系)は空振り感が否めなかったが、今作では対照的に内なる危険な薫りを隠さない。

 写真誌のフリーカメラマンにふんし、やさぐれ感が半端じゃない。冒頭から張り込み中の車中にデリヘル嬢を呼び込み、いつもは秘めている男臭さを全開だ。

 副編集長役の吉田羊との間にはかつての男女関係がぷんぷん匂うし、コンビを組む新人記者の二階堂ふみにもセクハラ発言連発だ。

 やさぐれの中に隠された純な思いや仕事への情熱、元花形カメラマンらしいスキルが少しずつ頭をもたげてくるところがミソで、後半は従来の二枚目の輪郭に結ばれていく。「モテキ」の大根仁監督が汚して、磨いて、味を出している。【相原斎】

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