銭湯を営む一家、余命2カ月を宣告された母双葉を宮沢りえが演じた。残された時間で、双葉は家族のためにしておかなければならないことを強い気持ちで実行していく。

 タイトル通りの熱い愛を、宮沢が体現した。宮沢と役柄が一体になっていた。深くて広くて、接する人皆に注ぐ優しさ。文字にすると、何となくうそっぽいかもしれない。でも、宮沢が演じたことで、双葉はどこかに存在していると思える。強さも弱さも持っている普通の人の熱い愛。難役を自然に演じていた。

 娘安澄(あずみ)を演じた杉咲花は、15歳の少女を、繊細に、時に体当たりで演じた。安澄を取り巻くエピソードは、物語が進むにつれどんどん大きくなっていくので、存在感も増していった。母の愛を全身で受け止めるストレートな芝居に胸打たれた。

 宮沢、杉咲、子役の伊東蒼、夫役のオダギリジョー、探偵役の駿河太郎、ヒッチハイカー役の松坂桃李、カニを送ってくれるなぞの女性役の篠原ゆき子。全員が、いとおしい役柄を精いっぱい演じている。

 涙、涙の最終盤、タイトルに込められた意味が分かると、驚きと同時にめらめらと力強い気持ちが湧き上がってきた。【小林千穂】

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