兵庫県尼崎市を舞台に笑いあり、涙ありの「家族」の絆を描く。バラバラだった家族がさまざまな現実に立ち向かうことで、1つになっていく姿にほろりとさせられた。

近松優子(江口のりこ)は東京の大手企業でエリート街道を歩むも理不尽なリストラに遭い、尼崎の実家に戻ってくる39歳。独身。町工場を営む65歳の父親(笑福亭鶴瓶)は「人生に起こることはなんでも楽しまな」が口癖で、突然、20歳の再婚相手・早希(中条あやみ)を連れてくる。

45歳差の夫婦に「そんな、アホな」と関西弁でツッコみを入れたくなるが、どこか憎めない雰囲気を醸し出す鶴瓶と、家族だんらんを夢見る思いをいちずに表現する中条の演技からは、お似合いのカップルに見えてくるから不思議だ。継母との“親子バトル”では、江口が表情をほとんど変えず、いらだち、戸惑いを自在に表現している。

タイトルになっている「尼ロック」は開閉式閘門(こうもん)「尼崎閘門」の愛称。目立たないが、水害などいざというときに尼崎の街を守ってくれる。家族にも縁の下の力持ちがいることを気づかせてくれる作品だ。【松浦隆司】

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