独立騒動でもみくちゃのSMAPだが、主演ドラマは好調だ。草なぎ剛主演のテレビ朝日系「スペシャリスト」(木曜9時)は冬ドラマ最高の初回視聴率17・1%でスタートし、香取慎吾はTBS系「家族ノカタチ」(日曜9時)で、いつもと違う受け身の役柄で新鮮な魅力をみせている。勝手な好みでいえば、どちらも面白い。

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 「スペシャリスト」は過去4回のスペシャル放送を経ての連ドラ化。17・1%の初回視聴率に続き、2話も2ケタをキープしている。冤罪(えんざい)で10年間服役した過去を持つ刑事、というオリジナルドラマらしい大胆な設定。服役中、全受刑者の犯行手口とあらゆる犯罪心理のデータを記憶したスペシャリストとして、難事件をバリバリ解決していく。

 「分かるんですよ俺。だって10年入ってましたから」。無遠慮キャラとさえた頭脳、涼しい顔で金庫を開ける犯罪テクなど、刑務所仕込みの捜査アプローチにオリジナリティーがあって、主人公が次にどう動くか興味が沸く。宅間善人という主人公と3年向き合ってきた草なぎの熱い思いが軽快な演技から伝わってくる。主人公単独でも楽しめるし、南果歩とのバディーもの、部署全体のチームものとしても楽しめる快作だ。

 香取の「家族ノカタチ」は、39歳独身“結婚できない男”をめぐるホームドラマ。文具メーカーの平凡なサラリーマンが、長期ローンで自分の城を手に入れた矢先、父親と義理の弟が住み着き、望んだ形とはほど遠い生活が始まる。

 慎吾ママとか「こち亀」の両さんとか、周囲を豪快に振り回す役のイメージが強い香取だが、今回は父親の西田敏行や、上の階に住む上野樹里に振り回される受け身の役どころだ。

 おおらかな父親とは対照的に、神経質で超堅実。世の中誰もが結婚したいわけではなく「人と暮らすのが向いていないから、誰にも迷惑かけないように、誰も傷つけないように自分の城を手に入れた」と訴える主人公のリアリティーを自然な雰囲気で見せてくれる。よくあるテーマではあるけれど、うっかりグラスを割られたくらいで中学生を怒鳴ってしまった自己嫌悪とか、この人らしい人間くささがきちんとあって、今どきの普通の人を演じている慎吾ちゃんもいいなあとつい見入る。

 草なぎも香取も、俳優業の転機となるようないい作品に出会った時にこんな事態が重なり、どれだけ落ち込んでいるだろうと思う。そんな中でも、それはそれ、これはこれで結果を出していることに、SMAP印を実感するばかりである。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)