柴咲コウ(35)主演で来年1月8日にスタートするNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」1話の完成試写会が先ごろ行われた。戦国時代の女城主、井伊直虎にスポットを当て、主演、制作統括、脚本、音楽を女性が担当することでも話題だ。試写室の反応は抜群で、私自身、ど頭からわくわくと見た1人だ。発表済みの情報をおさらいしながら、ネタバレしない程度に見どころを挙げてみた。

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 戦のたびに当主を殺され、ただ1人残された姫が「直虎」と名乗って戦国の世を渡る物語。お家断絶のピンチにあった井伊家を、260年にわたり江戸幕府を支える名門に発展させた手腕と、その裏にあった苦難、純愛が描かれる。

 直虎のキャラクターを決定づける最初の大きな出来事が幼少期にあるため、子役ゾーンが4週にわたって描かれるのも話題だ。作者である脚本家森下佳子氏が「どうしても大事。譲れない」とした部分。主演柴咲コウの登場が2月になるとあって、発表当時は多少ざわざわと受け止められていたが、1話「井伊谷の少女」の試写が終わると、会場はおもしろさに夢中の様子。まだまだ続く幼少期のいばらの道を思えば「4話は妥当」と納得の声が多かった。

 作者の思いに、子役たちも応えた。直虎の幼名、おとわ時代を演じるのは新井美羽ちゃん(10)。おてんばで聡明、井伊の谷のみんなに愛されるナウシカみたいな姫さまだ。柴咲は「みずみずしい。どこを切り取っても快活で、1人の少女が生き生きと生きている」。病弱で心優しいいいなずけの亀之丞(藤本哉汰)、思慮深くてしっかり者の鶴丸(小林颯)との幼いドリカム状態が野山の中で広々と描かれ、今後の重要な風景になる。彼らの世界が、親たちの血なまぐさい現実と地続きになっていて、かわいいやら切ないやら、ただならぬ見ごたえだ。

 制作統括の岡本幸江チーフプロデューサーは、3人の子役について「難しい台本によくこたえてくれて、3人の友情がとてもリアルなものになった。オーディションの時点でほろっときた」。柴咲、三浦春馬、高橋一生に切り替わるのは5話から。岡本氏は「子供たちのエネルギーを受け、大人の俳優さんたちも自然に面影を残してくれた。親戚の子が大きくなったのを見る気持ちで楽しんでいただけるのでは」と自信を見せる。

 女性たちが描く戦国は、美しいものは美しく、残酷な現実も淡々と描く。設定にちょっとしたファンタジー要素を加えて大きな世界を描き出す、森下氏のスゴ腕が大いに発揮されている印象だ。70年代後半~80年代あたりの大河全盛期の自由度を見てきた世代としては、歴史のお勉強テイストではなく、作家のストーリー性でぐいぐい描く正統エンターテインメントにわくわくした。

 特筆すべき注目を集めていたのは、中村梅雀の語り。あるものが直虎の人生を見守っている裏設定があり、物語のスケールと遊び心を感じさせてくれる名調子である。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)