21日に膵臓(すいぞう)がんのため59歳で亡くなった歌舞伎俳優坂東三津五郎さんの長男坂東巳之助(25)が23日、東京・歌舞伎座で会見した。昼の部の舞台を終えた後、臨終の日の様子を話した。

 当日、大阪から帰京後の午後9時半ごろに病室に入り。翌21日午前2時3分、巳之助と2人の姉、2人の叔母の5人にみとられて、三津五郎さんは静かに息を引き取ったという。

 「父が待っていてくれたのかなと思う。安らかに眠るようだった」

 一昨年8月に膵臓(すいぞう)がんを公表し、9月に摘出手術を受けた。昨年4月に舞台復帰したものの、9月に肺への転移が分かった。

 「父は現状を把握していた。普段と変わらず、僕に稽古もつけてくれた。最後の方は悟っていたように思った。外に出られない状況だったので、自分の台本を僕に預けて、後輩の俳優に渡してほしいと言っていた。苦しかったはずだけど、プライドが高い人だから、決して弱音は吐かなかった」

 1月末にインフルエンザにかかり、肺炎も併発して入院。2月6、7日には外出許可をもらって、家元を務める名取試験に立ち会った。

 「父が僕に最後に見せたかった姿のような気がする。父が残したものは痛感しているし、守っていきたい」

 一時、父に反抗して、歌舞伎から離れた時期もあった。

 「変な父でした。面白い人だったし、くだらないことも言ってた。僕が歌舞伎に戻りたいと言った時に、『本当にそれでいいのか』と言ってくれて、うれしかった」

 父の死の発表が遅れたことには「父が大事にしていた舞踊協会の公演が22日まであり、無事に幕が下りるのを待って、報告しました」と説明し、「59年間、好きなことをやりながら、使命に真っ正面から取り組んだ。臨終の時には『お疲れさま。ありがとうございました』と声をかけました。ひつぎには好きなお城の本を入れようと思っています」と明かした。

 24日に密葬を行い、25日に青山葬儀所で本葬を行う。