長嶋一茂(49)が企画・立案・出演の映画「ハッピーランディング」(天野千尋監督)が、来月6日から全国で順次公開されることになり、一茂が都内で取材に応じた。作品は結婚をテーマにした恋愛群像劇。7年ぶり2度目の映画製作で、前作の“失恋”を乗り越えて携わった。

 映画製作に携わるのは製作総指揮・主演を務めた08年「ポストマン」以来だ。

 「『ポストマン』は0~10まで携わったんです。今回は0~1。基本的には優秀なスタッフを信頼してやったので、苦労したところはそんなにないです。楽しくできたかな」

 1歩引いたスタンスは“失恋”から学んだ。前作は挫折だらけだった。

 「やりたいと思うことができない。2度とやりたくない気持ちしか残らなかった。僕自身が教訓としたのは、失恋と一緒で深入りしてやけどするより深入りしない。冷めている部分もないとダメだと」

 「ポストマン」直後にも映画製作の話はあった。金銭面で頓挫したが、それ以上に情熱が湧かなかった。

 「いろいろあったからね。おふくろやおばあちゃんが亡くなったり、親代わりにしていた人が亡くなったり、ダメージは相当大きかったです。7年掛かって、少しは立ち直れたのかな」

 前作に“失恋”も、後悔はしていない。

 「興行収入的には失敗なんでしょうけど、作って良かったと思っています。残るものを作れたのは、子供たちの方を向いている部分もあると思うんです」

 そんな思いを抱く理由の1つは幼少期の体験にある。小学生の時、父、長嶋茂雄氏と映画「柳生一族の陰謀」を東京・渋谷の映画館で見た。父の笑顔を見て「いつか映画を作って喜ばせたい」と思い続けてきた。父の新作観賞予定を聞くと「来てもらえればいいですけど、いちいち映画館まで行く人じゃないから」。だからこそ、唯一の父子の映画観賞が鮮明に刻まれている。

 情熱が戻り、今後の映画製作にも前向きだ。「またタイミングが合えば、やってみたいなと思えます。一番はタイミングだけど、いつも準備だけは」。20年間、温め続けている企画書は、車の中に置いてあるという。【近藤由美子】

 ◆映画「ハッピーランディング」 結婚式を逃げ出した女、恋人にプロポーズを断られる男(一茂)、頑張りすぎて空回りする花嫁、ケンカばかりの10年目の夫婦、マスコミに追われる著名人カップル、離婚危機の妄想亭主、花嫁に逃げられた廃人男…。それぞれ悩みながらも“幸せの着地点”を目指し、懸命に生きる姿を描く。一茂のほか、中村ゆり、佐藤めぐみ、小池里奈、金児憲史、阿部亮平、原幹恵、相築あきこらが出演。3月7日に広島で先行公開。28日には東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズでプレミア上映会開催。