俳優今井雅之さんが28日午前3時5分、大腸がんのため、都内の病院で死去した。54歳だった。

 親交の深かった俳優梅沢富美男(64)がこの日、都内で取材に応じ、「気を許せる、熱い男だった」としのんだ。

 今井さんが舞台降板を決めた時、「どうしたんだ。降りるなよ」と怒ると、今井さんは「声が出ないんですよ。いつも言っていたじゃないですか。役者は1に声、2に声、3に顔と。大向こうに届かないし、もう軍人役はできません」と言い返したという。「舞台に上がれないことは、舞台人にとって死ねというのと同じ。つらかったと思います」と思いやった。

 00年のドラマ共演から、今井さんは梅沢を「先輩」と言って慕い、MXテレビ「バラいろダンディ」でも共演した。「舞台降板の会見後、1時間半ぐらい話したけど、弱音を吐かない男が泣いていた。悔しかったんだろうね。今日(28日)も番組に出る予定だった。しゃべれないのに出たいと言うんですよ。生きることの素晴らしさを伝えたかったのだと思います」。

 最後に会ったのは亡くなる2週間前。今井さんから「腸の検査に行った方がいいですよ」とアドバイスされ、医者嫌いの梅沢も検診を受けた。「ポリープが3つ見つかって取りました。良性か悪性かは来月分かるけど、あいつのおかげかな」。

 秋には今井さんが企画・主演する映画で共演する予定だった。「彼の父親役で、おれのために台本を手書きして、製本しないままで手渡してくれた。もう映画は無理だと思うけど、おれにとって一生の宝物になってしまった」と無念さをにじませた。【林尚之】