今月14日に都内の自宅で、大動脈瘤(りゅう)破裂胸腔(きょうくう)内出血のため急死した俳優阿藤快(あとう・かい)さん(本名公一=こういち、享年69)の通夜が20日、出身地の神奈川・小田原市の湘和会堂小田原で営まれた。地元を愛した阿藤さんらしく多くの市民が涙を流し、TBS系ドラマ「下町ロケット」で共演した主演の阿部寛(51)や、親交の深い女優名取裕子(58)らも駆けつけた。関係者も含め約600人が参列し、故人の突然の死を悼んだ。

 斎場に阿部が姿を見せると、参列した市民らがざわめいた。礼服に身を包み、カメラマンのフラッシュを浴びながら、険しい表情で斎場に入った。ドラマの収録で多忙な中、小田原まで弔問に訪れた。

 阿藤さんの地元愛が表れた葬儀だった。10年から「小田原ふるさと大使」を務め、毎年5月には「北条五代祭り」に参加。遺影には、数年前の同祭りで、北条早雲に扮(ふん)した甲冑(かっちゅう)姿で笑顔の写真が使われた。斎場には阿藤さんのファンも含め、多くの市民が駆けつけた。

 阿藤さんは、名取から贈られた鯛柄の浴衣を着て棺(ひつぎ)に納められた。82年のドラマ「セーラー服と機関銃」出演時に着た法被や、遺作となった舞台「MOTHER 特攻の母 鳥濱トメ物語」の台本なども入れられた。祭壇は170本の花で飾られたが、阿藤さんが生前から「葬儀の時は華やかにはしないでほしい」と望んでいたため、派手な装飾などはされなかった。

 14日に阿藤さんが亡くなっているのを発見した妹は「最近疲れている、とは聞いているけど、まさか亡くなっているとは思いませんでした」と振り返った。14日は阿藤さんの誕生日。「以前から、『坂本龍馬みたいに、誕生日に死にたい』と言っていたけど、本当にそうなっちゃうなんて…」と悲しんだ。

 喪主は長男基(もとい)さんが務めた。戒名は芸名の「快」と本名の「公一」にちなみ「眞快公實居士(しんかいこうじつこじ)」。別居中という阿藤さんの妻は参列しなかったという。葬儀・告別式は今日21日午前9時から同所で営まれる。【横山慧】