ドナルド・トランプ氏が米次期大統領に当選。日本でも“トランプフィーバー”が沸き起こった。12月某日、都内のとある一室。90年代に「なるほど!ザ・ワールド」などの情報、バラエティー番組で活躍したマジシャンのトランプマンが有馬記念を予想した。

 ド派手な赤い衣装に白塗りの顔をした、赤マスクの奇妙な男、トランプマンから手招きされ、目の前の椅子に着席を促された。無口、無言…。話しかけても、返事はない。おもむろに出走馬名などが記されたカードから「第61回」、「有馬記念」の2枚を抜き出し、伏せた。「予想、してくれるんですか?」。もちろん、答えはない。パチンッ!! 指を鳴らし、再びカードを裏返す。あれ…、字が違う。「サトノダイヤモンド」、「キタサンブラック」。いきなり2択だ。

 その後は“トランプ現象”ならぬ、“トランプマン現象”を目の当たりにした。2枚を山に戻し、カードを混ぜる。一番上にある1枚をめくると「キタサンブラック」がいた。何度繰り返しても、結果は一緒。横から見ても、ギリギリまで近づいて見ても、だ。偶然じゃない。馬群にもまれ、出入りの激しい展開になっても、最後は必ず1着でゴールする-。マジックを使った予言なのか…。

 視線を上げると、無表情だったはずのトランプマンの右口角が上がっている。目が合った。そして、ウインクがズキュン。勝つのはキタサンブラック。どうやら、そう言いたいらしい。

 情報筋によると、彼は金でできた54万円相当のトランプなど、約3500種類を所有するコレクターの顔も持つという。正体不明のマジシャンも、なかなか粋な趣味を持っているようだ。ちなみにジョーカーには4歳牝馬ミッキー「クイーン」を指名した。「その2頭の馬券を買うってことですか?」と問いかけると、マスクの奥の両目に火がともり、深くうなずいた。【取材・構成=松田直樹】