「昭和の喜劇王」こと、故藤山寛美さんの孫で松竹新喜劇の藤山扇治郎(30)が22日、主演舞台「銀二貫」(6月1~11日、大阪松竹座)役作りのため、大阪府高槻市の寒天工場を訪ね、天然ぶりを存分に発揮した。

 今公演では、父をあだ討ちで亡くし、寒天問屋へ奉公に出される主人公・松吉を演じ、この日は、寒天職人役の胡蝶英治(こちょう・えいじ=33)とともに見学。てんぐさを煮出して固め、ところてんから寒天へと作り出す工程を学んだが、扇治郎は随所で天然発言を連発した。

 てんぐさを煮出した水分を固めて寒天作りを始める過程で、てんぐさのカスを見て「もずくみたい」。その後、凝固したものを細く切り出す作業では、胡蝶が職人役らしく、センス良く切り出していくのに対し、扇治郎は「あれ? 重い…」と悪戦苦闘。

 コツを学び、作業を習得したものの、その合間にところてんをこっそり食したといい「甘いですね」と漏らし、工場スタッフを驚かせた。もともと、てんぐさに甘さはなく、なぜ甘く感じたのかは謎のまま。胡蝶も「こっち(扇治郎)がこれだから、僕がしっかりして見えますね」と笑うしかなかった。

 ただ、体当たり? で寒天職人の仕事を学んだ扇治郎は「小道具ひとつ、昔なら? と思って、考えられたので、役作りには大きいですね。新喜劇も職人の世界も、お客さんに喜んでもらう精神は一緒。通じるものはあると思います」と共感した様子。原作の小説は「あっという間に読みました。おもしろかった」と世界観も習得しており「僕にしかできない松吉を演じたい」と意気込んでいた。