-池松と共演して

 石橋 スクリーンで見ていて、本当に好きな俳優さんで、見る側の気持ちとしてスクリーンの中の人という感じだった。一緒にやった時に、自分がすごいことをしてきているとは全く自分の方からは出さないし、「この映画のために一緒に戦おうよ」って、ある意味、私にすごく歩みを合わせてくれたところはあるし、引っ張ってくれた部分もあるし、そこに応えたいなと思った。本当にすごい人というのは大前提ですけど、一緒に戦ってくれた。この作品の中で特別だし、横にいて見守りながら応援しながらいてくれなかったら、絶対に出来なかった。感謝し切れないですね。

 -池松の現場での印象的な姿は

 石橋 常に監督とも戦っているように見えました。ぬるいなれ合いではなく、すごく勝負しているなと。周りには見えない戦いというか…想像しかできないけれど、空気で分かる。そこに全てをかけ、注いでやっているというのが、ひしひしと伝わってきました。それは作品のためであって、全体的に2人は同じ方向を向いていると思った。

 -池松の姿勢で自分の今後につながりそうなことは

 石橋 ある意味、きっと、映画のためだったら死んでもいいんだろうなっていうふうに感じた。それって普通、出来ないことだし。同じにはなれないし、なろうとは思わないんですけど、池松さんがそうやって映画に関わることで起きる周りの反応…引っ張られていくものが、ものすごくあったので、思いは強ければ強いほど伝わるんだなって。もちろん、俳優をずっとやってきたし、すばらしい俳優さんだから技術もあるんだろうけれど、全く技術でやっているように見えないし、ものすごく深いところで、いろいろなことを感じている…そういうことを、あまり言わないですけれど、ものすごく人に対する愛もあるし、本当にすてきだなと思いました。

 次回は、2月のベルリン映画祭に参加した石橋が、バレエ留学など自らの人生も踏まえ、海外から見た日本と女優に進出した今の自分を語る。【村上幸将】