宝塚歌劇団の95期は「花の95期」とも言われ、各組でスターがそろう。首席の星組トップ礼真琴をはじめ、花組トップ柚香光(ゆずか・れい)、月組次期トップ就任が決まった月城かなと、ほかにもトップ娘役3人を輩出している

中でも、礼とほぼ同時期から、宝塚バウホールや外部劇場主演を務めてきたのが、柚香だ。

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同期の元宙組トップ娘役の実咲凜音、元星組トップ娘役の妃海風が口をそろえて言う。首席だった礼はもちろん、柚香にも「(宝塚音楽)学校時代からオーラがすごくて、いずれはトップになるだろうと思っていた」。下級生時代から抜てきされ、前花組トップ明日海りおも在位終盤、後継は柚香だろうと考えていたという。

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そんな柚香は、東京宝塚劇場公演の開幕を待つ花組公演「アウグストゥス-尊厳ある者-」「Cool Beast !!」で、ローマ帝国の初代皇帝オクタヴィウスにふんしている。カエサルの腹心との対立を経て頂点へ登るが、柚香は、その結果だけではなく、成長過程にも強くひかれ、共感を覚えるそうだ。

「どんなに聡明(そうめい)な方でも、葛藤や挫折、過ちを経験して進む」

「最初から完璧な人間はいない」

今作にあたってのインタビューで、こう答えた言葉が耳に残った。まるで、自身に言い聞かせているかのように聞こえたからだ。

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武器のダンスは、流れるように音楽に乗りつつ力強い。下級生時代から、舞台のどこに立ってもすぐにその存在が分かる。いわゆる「華」「オーラ」にあふれ、群舞でも、ひときわ目を引く。「踊るスタミナ」も備えている。

通し稽古の場合、演出家が指示を出すために途中でストップさせることもある。激しいダンス場面では、たいていの人は息が上がり、返事が途切れ途切れになるものだが、柚香1人が平然と受け答えしていたこともあった。

ただ、おそらく本人は当時、ダンス以外の技量もさらに磨く必要を感じていたとも思う。新人公演だけでなく、本公演でも主要キャストに抜てきされながら、技量を磨くワークショップの公演に参加したこともあった。

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一見、順風満帆に見えるが、人知れず壁を乗り越えようともがいてきた。何より、自身から見て完璧に見えていたであろう明日海が、毎公演、前回の自分を超えようと必死で努力し続ける姿を目の当たりにしてきたのだ。

明日海と役がわりの公演を務めた際、「明日海さんはトップとなってなお日々進化し続けている。本当にすごいですよ」と話してもいた。明日海からトップの座とともに、「努力し続ける力」というバトンも受け継いだように思う。【宝塚担当・村上久美子】

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