世界3大映画祭の1つ、カンヌ映画祭で邦画史上初の脚本賞を受賞した「ドライブ・マイ・カー」が作品賞と西島秀俊の主演男優賞の2冠に輝いた。濱口竜介監督(43)は「西島さん以外の人では、こういう作品を作り上げることは出来なかった」と喜びをかみしめた。

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濱口監督は「ドライブ・マイ・カー」を携え、11月下旬から12月上旬まで欧米の各映画祭を歴訪して複数の賞を受賞し、21日には米アカデミー賞国際長編映画賞のノミネート候補15作品にも入った。その中で、日本のスポーツ新聞の映画賞を受賞したことについて「賞のひとつ、ひとつが観客に、映画館での映画との出会いを促す。ありがたいとしか言いようがない」と喜んだ。

西島が「言葉の力は、ものすごい」と絶賛する脚本は、村上春樹氏(72)の同名小説を含む3本の短編を投影し、1本の長編映画として書き上げた。「人間の心理的な面でアンリアルだけどリアルという、村上さんの文章の力を探り、今まで書いたことがない脚本が書けた」と振り返る。

一方で「俳優の演技を見て欲しい」と訴えてきただけに、米ニューヨーク・タイムズ紙選の今年を代表する13組の俳優にアジアから唯一、選ばれた、西島の主演男優賞受賞を喜ぶ。「分かりやすい演技派ではないと思いますが、本当に周りを見聞きしたことで生まれ、抱える感情はちゃんとカメラに映る。180分近い映画の175分くらい出ていますが、西島さん以外の人では観客も見るに堪えなかったでしょう」と独特の言い回しで賛辞を贈った。【村上幸将】

◆選考経過・作品賞 「演技を通し人々の葛藤を描いたのが非常に映画的なアプローチ」(伊藤さとり氏)「内容は盛り込みすぎの感はあるが、多民族映画という点は賞に値する」(秋山登氏)と「ドライブ・マイ・カー」への支持があり1回目の投票で過半数獲得。

◆濱口竜介(はまぐち・りゅうすけ)1978年(昭53)12月16日、神奈川県生まれ。東京芸大大学院映像研究科で黒沢清監督に師事。18年「寝ても覚めても」がカンヌ映画祭コンペ部門出品。共同脚本を手掛けた20年「スパイの妻」で、黒沢監督がベネチア映画祭銀獅子賞(監督賞)受賞。

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◆「ドライブ・マイ・カー」 舞台俳優で演出家の家福(かふく)悠介(西島)は妻音(霧島れいか)が秘密を残し亡くなった2年後、演出を任された広島の演劇祭に愛車で向かう。寡黙な運転手渡利みさき(三浦透子)と過ごし、目を背けたことに気付かされる。

▽昨年の作品賞「罪の声」の土井裕泰監督 濱口監督、そしてすべてのスタッフ、キャストの皆さま、本当におめでとうございます。この静謐(せいひつ)な喪失と再生の物語が濱口監督の圧倒的な映画的筆力をもって世界と切り結び、扉を次々と開いてゆく様(さま)に、一制作者として大きな刺激を受けました。間違いなく、これからの日本映画にとって重要な一作だと思います。