石原裕次郎さんの代表作を初めて舞台化した「黒部の太陽」が5日、大阪市北区の梅田芸術劇場で開幕した。舞台あいさつには石原プロの渡哲也社長(66)をはじめ、舘ひろし、徳重聡ら同プロ所属俳優が全員集結。公演中も客席で見守った。

 舞台は困難を極めた黒部ダム建設に命を懸けた男たちの姿と、これを映画化しようとした裕次郎さんらの実話を交錯させた大作。裕次郎さんには役作りで約10キロのダイエットに成功した中村獅童(36)がふんし、当時映画界に君臨した「五社協定」を破って裕次郎さんと組んだ三船敏郎さんを神田正輝(57)が熱演した。

 圧巻は映画でも最大の見せ場だった「トンネル掘削での出水シーン」。高さ6メートル、幅12メートル、奥行き8メートルのトンネルセットに20台のポンプを設置し、約4分に渡って計40トンもの本物の水が噴出。その中での演技に神田も「息もできなくて芝居どころじゃないよ」と振り返るほどだった。

 終演後は満員に膨れあがった約1800人の観客からスタンディングオベーションで迎えられカーテンコールを繰り返した。獅童は「もともと、初日は緊張するものですが、今日は渡さんも客席にいてちょっとした拷問だった」と苦笑い。しかし、前日まで出水シーンの段取りを変えたり、セリフを変更したりという逼迫(ひっぱく)した状況での初日終了にホッとしたのか「天国で裕次郎さんや三船さん、皆さんに見守られて…」と言うと涙で声を詰まらせた。神田から「自分なりの裕次郎さん像を作ってたと思うよ」と合格点をつけられると、獅童も「毎日、初日のつもりで突っ走りたい」と26日の千秋楽まで熱演を誓った。