女優森光子(89)が29日、舞台「放浪記」の千秋楽を東京・帝国劇場で迎え、17人目となる国民栄誉賞も正式発表され二重の喜びとなった。誕生日の今月9日に単独主演記録2000回を達成し、この日で61年の初演以来2017回。森は発表の約2時間前に観劇していた森喜朗元首相によって受賞を知った。「言葉は悪いけど、『やった~』という気持ちでした」。俳優では長谷川一夫さん、渥美清さんが死後に受賞したが、現役は初。文化勲章と国民栄誉賞を受けるのは黒沢明監督に続き2人目で「黒沢先生みたいに映画は撮れないけれど、黒沢先生も芙美子役はできない。五分五分ね」と笑った。

 特別カーテンコールで森は「今日でこの役にさよならするとは思っておりません。引退なんかしません。表現力の豊かな女優になって何回もいい芝居をご覧頂きたい」とあいさつすると大きな拍手が起こり、「幸せな思い。日本をいい国にするために私も努力します。かといって、選挙に出るつもりはありません」と笑いを誘った。今後の「放浪記」上演は未定で、母親役の大塚道子が「またできたらどんなにいいか」と訴えると、森は「またお目にかかる日が来ます」と続演に意欲をみせた。7月1日に首相官邸で授与式があり、秋に新作舞台を予定。東宝も11年の「放浪記」50周年に向け上演の検討に入る。

 [2009年5月30日8時28分

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