東日本大震災の影響で準備が間に合わなくなったとして、総務省が岩手、宮城、福島の3県に限り地上デジタル放送への完全移行を7月24日から半年~1年程度延期する方向で調整していることが8日、分かった。

 総務省の調査では、10年末時点の3県の地デジ受信機の世帯普及率は90~93%。さらなる上積みを目指していたが、普及活動は震災でストップしている。津波で多くの家屋が流されたこともあり、普及率は大幅に低下したともみられている。被災地や与党の一部からは「震災で地デジ移行は困難になった」との声もあり、アナログ放送の停止で被災者が情報を入手する手段が減ってしまうことへの懸念も強まっていた。

 延期が決まると、3県では7月24日以降も地上デジタル放送とアナログ放送の両方が見られる。総務省は、今、国会に提出している電波法改正案に3県での延期を追加する見通しだ。

 ただ、アナログ放送の停止で空く周波数帯を、通信容量が増大する一方の携帯電話に割り当てることも急務となっており、総務省は「長くても1年程度しか延ばせない」としている。また、アナログ放送の延長により、地元の放送局は追加の費用負担が発生することから、総務省は、その分について、国が補塡(ほてん)する可能性についても検討を進めている。

 一方、テレビ各局は慎重で民放連は「正式に何も話を聞いていないので、7月24日に向けて粛々と環境を整えています」。NHKも「正式な話がないのでコメントできない」としている。これまで中継局など送信側には、震災による影響は出ていないとされている。