音楽家長渕剛(54)が26日、東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県石巻市内の日和山(ひよりやま)公園で、NHK総合「SONGS」(水曜午後10時55分)の収録を行った。震災から3カ月以上が経過したが、この悲劇を忘れず、後世に伝えるためにと、雨が降り続く中、未来を担う地元小学生ら総勢約1000人とともに「TRY

 AGAIN

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 JAPAN」を歌い上げた。この模様は7月13日放送予定。

 収録が行われた日和山公園は標高60・4メートルで、石巻市内を一望できる。あの日、この公園には大津波から逃れるために多数の市民が避難した。その人びとの目の前で、太平洋側の門脇町と南浜町は津波にのみ込まれ壊滅した。いまもがれきの街が広がっている。

 復興は1歩ずつ始まっているが、その一方で、地震や津波の恐ろしさは原発事故や政治の混迷により、少しずつ記憶の中から遠ざかり始めてもいる。そのため、「海は静かになったが、忘れてはいけない」と思う長渕は、その悲惨な光景をバックに「SONGS」の収録に臨むことにした。

 長渕は震災直後から「どんな時代でも子供の声や笑顔は希望。だから未来を担う子供たちと一緒に歌いたい」と考えていた。日和山公園での歌唱曲「TRY

 AGAIN

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 JAPAN」は、昨年秋に発表したアルバム「TRY

 AGAIN」の収録曲で、再び立ち上がる強い思いが歌われている。震災後に、長渕はこの曲をゴスペル調にアレンジし、プロのコーラスだけでなく、子供たちの声とともに収録し直した。「『絆』の糸は切れやすいが、何本もよっていけば、強くなる。声も1つ、2つと重なると強くなる。その声の粒を集めて復興の歌を歌いたい」。

 その重なる声の中心が、未来を担う子供たちだった。日和山公園での収録には、プロやアマチュアのコーラス70人に、石巻小の児童約100人。そして、収録を知って集まった市民約800人の計1000人が参加した。雨にもかかわらず、全員で熱唱した。長渕は収録後、感謝の気持ちと高揚感から、予定外の「とんぼ」「乾杯」をギター1本で歌い上げた。「どんな大きなイベントより、国の絆を感じた。まだまだ時間はかかるかもしれないけど、日本人として一緒に頑張りたい」と話した。